2015年10月の健康便り —メンタル—

読書のすすめ

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 先月はアルバイトで忙しかった次郎さん。忙しさがたたってか、体調を崩してしまったようです。胸に痛みを感じたり、息切れしたりすることが多くなり、受診したら、気胸という病気だとのこと。幸いにも深刻な状態ではなく、医者からは、とりあえず自宅で静養するように言われました。

「あー。暇だ…。絵の練習も飽きちゃったし、やることなくなっちゃったなぁ…。そういえば、花子さんがお見舞いに本の差し入れをしたいから、どんな本が好きか教えてねって言われたっけ。連絡しないとな」

 あら、次郎さん。いつの間にか女友達ができたみたいですね。本を差し入れに持ってきてくれるなんて、優しい子じゃないですか。夏も終わり、読書の秋の始まりです。今月は、言葉で紡がれた本の世界について考えてみましょう。

 本の世界は書き言葉の世界です。立ち現れては流れていく話し言葉の世界と違って、書き言葉の世界は、本の中に留まってくれています。そして、本を開くと、いつでもその世界の中に入っていくことができます。さて、本とひと口でいっても、その種類は様々。例えば、小説などは楽しみの要素が多いでしょう。自宅静養をしている次郎さんにとっては、小説を読んで、楽しみながら時間を過ごすのもいいかもしれませんね。

 自分の知識を広げるための本もあります。学校で使う教科書のように、体系的にまとまった知識を覚えるための本です。漫画研究会に入っている次郎さんには、美術についての本が役に立つでしょうか。こうした学問的な知識は、ある程度の普遍性がありますので、覚えれば覚えただけ、同じ学問を志す人たちと世界観を共有することができます。

 こういった覚えて学ぶ本とは逆のスタイルをとるものもあります。同じ美術でも「美術とはなにか」といった、より根源的な分析を試みる本です。いわゆる哲学的な態度で書かれた本ですね。哲学は歴史が長く、難しいのでとっつきにくい分野ではあります。しかし、青年期を生きている次郎さんたちにとって、「~とはなにか」と問い続けることは、とても大切なことです。

 青年期はアイデンティティ獲得の時期とも言われています。アイデンティティとは、簡単に言うと、“自分はこういう者だ”という感覚のことです。大学に入る前は、決まった勉強をそつなくこなしていれば自然と先に進んでいけたかもしれません。しかし、大学では、これからどんな生き方をしたいのか、自ら模索して決めていくことになります。そのためには、「自分とは何者なのだろうか」と、自分自身の在り方を振り返って考えてみることが役立ちます。学校で習う勉強とは毛色が違いますが、哲学の本を頼りに「~とはなにか」という視点から考えを深めてみても良いかもしれませんね。

 さてさて、読みたい本が決まった次郎さん。花子さん宛にメッセージを打ち始めたようです。いったいどんな本をお願いするのでしょうか。