2015年12月の健康便り —メンタル—

その人らしい生き方ってなんだろう?

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 「いったい僕は、将来どんな仕事に就くんだろう?どんな人生を送るんだろう?」

 ふとしたときに考えてしまうのは、将来に対することです。大学に入学して後期に入りましたが、次郎さんは未だに将来のことが思い描けずにいます。お父さんからは「人生の目標を持て」とどやされるし、将来の夢を語る友人たちの姿を見ていると、なんだかこのままで大丈夫なのかなぁと、だんだん不安になってきます。

 そんな中、先日テレビで興味深い特集がありました。それは、家庭に入って、専業主夫として働く男性についての特集です。その男性は、仕事は妻に任せて、子育てや家事など、家庭の仕事を一手に引き受けていました。次郎さんにとっては衝撃的でした。なぜなら、次郎さんの家族は、お父さんはバリバリの営業マン、お母さんは夫を支える専業主婦として家のことをしてきたからです。それが普通だと思っていたのに…。「そういえば、花子さんは将来起業して、会社経営がしたいって言ってたな。大胆な夢だなぁって思っていたけど、“男は仕事、女は家庭”が普通じゃないのかな?」

 悩んでばかりの次郎さんですが、今回は大切なことに気づきましたね。確かに、“男は仕事、女は家庭”という価値観が普通だった時期があったかもしれません。しかし、そうした価値観は時代や文化に対して相対的なものです。ある時代の特定の文化の中では通用するかもしれませんが、「いつでも・どこでも・誰にでも」通用する価値観とは言えないでしょう。では、「いつでも・どこでも・誰にでも」必要な価値観とはなんでしょうか?

 それは人権です。日本国憲法には幸福追求権や平等権、自由権や社会権など、さまざまな権利が規定されています。もし、この権利が奪われてしまったら、人はその人らしい生活を送れなくなってしまいます。男性だから、女性だからという考えに従って自分や他人の人生を決めてしまったら、男女平等の原則に背いてしまいますし、その人らしい生き方を奪い取ることにもなってしまうのです。人権は、法律で定められているからといって、すぐさま達成されるものではありません。人がお互いの権利を尊重しあい、守り育てていく中で、初めて達成されるものです。

 「そうだ! 花子さんをランチに誘ったときに、彼女の会社の経営者になりたいっていう夢をもっと聞いてみよう!」

 そうですね。花子さんには花子さんらしい人生を生きる権利があるわけですし、彼女の夢を応援することは、人権を尊重することにもなるでしょう。もっとも、次郎さんは単に花子さんと仲良くなりたいだけかもしれませんが…。

 12月4日から人権週間が始まります。人権に関するさまざまな啓発活動も行われますので、この機会に人権について考えてみるのもよいかもしれませんね。