2016年2月の健康便り —メンタル—

困った人?困っている人?

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 飲食店でアルバイトをしている次郎さん。仕事もだいぶ慣れてきて、バイト仲間との人間関係も良好です。最初は大変だった仕事も、だんだん楽しくなってきました。ところが、最近入った同い年の男の子Aさんは、なんだか大変な様子です。

 次郎さんもAさんも、お客さんの注文を聞いて厨房に伝え、出来上がった料理をテーブルに持っていくという仕事をしています。お客さんが少ないときは問題ないのですが、混みだしてくるともう大変です。Aさんはどうも臨機応変に対応することが苦手なようで、料理を運んでいるときに注文を頼まれると覚えていられなかったり、どのテーブルに料理を運んでいいのか忘れてしまい厨房に戻ってきたりということが続きました。張り切ってお店の中を駆け回ってはいるのですが、どうにも効率が悪いというか、物忘れが過ぎるというか…。先日はお客さんの注文を厨房に伝えることを忘れてしまい、クレームになりかけてしまいました。

 「この仕事、自分に向いてないのかなぁ。自信無くしちゃったよ…」Aさんから相談を受けた次郎さん。Aさんの話をよく聴くと、どうやら彼は小さいころから、複数のことを同時に行うのが苦手だったようです。ひとつのことに注意を向けると別のことがおろそかになってしまうので、忘れ物が多く、物事に優先順位をつけてこなしていくのも難しいとのことでした。幸い、当時の担任の先生がAさんのことを気にかけてくれて、忘れ物をなくす方法を一緒に考えてくれたとのこと。どんな方法なのかと聞いてみると、やるべきことのリストを作って、目で見てチェックできるようにしていたようです。

 「そういえば、僕も何をやっていいのかわからなくなったときは、やるべきことをノートに書きだして、頭を整理したりするものなぁ。Aさんもうまく頭を整理できればやれるようだし、何とかならないかなぁ」そう考えた次郎さんは、バイトリーダーと一緒にAさんの仕事のやり方を検討することにしました。「仕事の手順をリスト化して、リストに沿いながらこなしていく」、「料理を運んでいるときに注文を聞かれたら、その場で対応せずに次郎さんにお願いする」、「お店が混みだしてきたらバイトリーダーに指示を仰いでから業務に取り掛かる」などのルールを決めてみたところ、Aさんは以前より落ち着いて仕事をこなすことができてきたようです。元々いろんなところに注意が向くAさん。今ではお客さんのちょっとした困りごとに気づく余裕も出てきて、気配り名人として活躍できるようになりました。

 人それぞれ、いろいろ得手不得手はあるものです。Aさんのように元々の特徴として、ある部分が特に苦手、という方もいます。でも、ちょっとした工夫でその人が活躍できる可能性は広がります。今回のように周囲でフォローしあうことができると良いですね。