健康便り

5月の健康便り

こころに自転車ルールを —健康—

 寝坊した!花子さんは急いで自転車に飛び乗ります。「U子に連絡しなきゃ」焦った花子さん、片手運転のままポケットからスマホを取り出し、画面を見ようとしました。その瞬間、歩いてきたおじさんとぶつかりそうに…。「バカヤロ-!」とどなられて、花子さんはショック!「ぶつからなかったし、どなるようなこと?」
 モヤモヤした花子さん、さっそく学校で会った次郎さんに相談しました。話を聞いた次郎さんは一言。「それ、花子さんのルール違反だよ」自転車にもルール?花子さんは首をかしげました。

 花子さん、危なかったですね。自転車は誰もが気楽に乗れる乗り物です。しかし、自転車は道路交通法上では軽車両。ルールを守らずに乗ると、自分がケガをするだけでなく相手にケガをさせることもあり、大変危険です。改正道路交通法の施行に伴い、平成27(2015年)年6月1日から、自転車運転中の危険行為により3年間のうちに2回以上摘発されると「自転車運転者講習」を受けなければいけません。知らずに行っている危険行為がないかどうか、振り返ってみてください。

<自転車運転者講習の対象となる危険行為>
  1. 信号無視:急いでいるとついやりがち。気軽にやっていませんか?
  2. 通行禁止違反:道路標識で自転車の通行が禁止されている道路は通れません
  3. 歩行者用道路における車両の義務違反:歩道の通行は徐行()することが自転車の義務

    徐行とは:すぐに止まれるように平常よりスピードを落として進むこと

  4. 通行区分違反:車道と歩道が区別された道路では歩道通行や車道の右側通行はいけません
  5. 路側帯通行時の歩行者の通行妨害:自転車が通行できる路側帯()で歩行者の通行を妨げてはいけません

    路側帯とは:道路のわきに白い線を引いて区分した帯状の部分

  6. 遮断踏切立ち入り:警報器の鳴っている踏切への立ち入りはできません
  7. 交差点安全進行義務違反等:信号機のない交差点で左から来る車等の通行を妨げてはいけません
  8. 交差点優先車妨害等:交差点で右折するときに、その交差点で直進や左折しようとする車両の進行を妨げてはいけません
  9. 環状交差点安全進行義務違反等:環状交差点内を通行する車の進行を妨害してはいけません
  10. 指定場所一時不停止等:一時停止の標識のある場所は、自転車も一時停止を
  11. 歩行通行時の通行方法違反:歩道を通行するときは車道寄りを徐行しましょう
  12. 制動(ブレーキ)不良自転車運転:ブレーキが壊れたまま乗っていませんか?
  13. 酒酔い運転:車と同じくお酒を飲んだら自転車には乗れません
  14. 安全運転義務違反:他人に危害を及ぼすような速度の運転、傘さし、携帯電話を操作しながらの運転で事故を起こした場合、安全運転義務違反になることも

 花子さんは、自転車に乗るにも車と同じくらい規定が厳しくなっていることを改めて知り、とても恥ずかしくなりました。どなったあの人は私がルールを守らなかったことにも腹を立てていたんだろうな。
  ルールは誰もが安全に安心して過ごすためのもの。自転車のルールを心にとめて、他人にも自分にも優しい気持ちで自転車に乗ろうと思う花子さんでした。

「被害者」と「加害者」は紙一重 —メンタル—

 久しぶりに帰省した次郎さんは、地元の友人達と一緒にいつものファミレスへ出かけました。いつもの顔ぶれだと思っていたら、一人足りません。「Fは今日、来ないの?」と聞くと、「あいつ、今、大変なんだよ」と、数か月前にF君が起こした自転車事故の話をしてくれました。

 商店街の三叉路でおばあさんとぶつかり、転んだおばあさんは大腿骨を骨折して入院。歩行中のおばあさんは「被害者」、自転車に乗っていたF君は「加害者」となってしまったのです。事故は地元紙の記事になるくらい、F君の周囲は騒然としていたそうです。「おばあさんのケガも回復に向かっているし、補償も保険でなんとかなったみたいだけど、Fの方が落ち込んじゃって、今も大学休んで引きこもってるんだ」と心配そうに話してくれました。
 「子どもの頃、よく親に“車に気をつけなさい”とか言われたけど、あれって車にひかれるなってことじゃん?自分が人をひいて、加害者になるなんて思ってないもんな…」「新聞に名前は出なかったけど、この辺だったらFだって分かるよ」「俺がFだったら、やっぱ落ち込むよ。Fが100%悪いわけじゃないし、あいつだってケガしたんだぜ。だけど相手は老人だし、骨折までしてたら言い訳できないでしょ」とみんなが話しているのを聞きながら、次郎さんはF君の気持ちを考えていました。

 普段、何げなく乗っている自転車が凶器になって、ある日、突然「加害者」になってしまったF。事故の瞬間、ものすごく焦ってパニックになったに違いない。救急車が来て、警察官に事情を聞かれ、野次馬に囲まれて、Fだって怖かったと思う。自分のケガの痛みなんて感じないくらい、動揺しただろう。明るくて、冗談ばっかり言っていたFが家から出られないなんて、相当なショックを受けたんだ。他人にケガをさせてしまったという重苦しい辛さを、Fは一人で抱え、身動きできなくなっているんだ。不謹慎だけど、相手が骨折くらいで済んで良かった。
 話し声が途切れた時、みんなが「自分だって、いつFの立場になるか、分からない」と思っていました。次郎さんは「被害者と加害者って紙一重だよね。どっちの立場になるか、誰にも分からないよ。でもさ、どっちにもなり得る可能性があるってことを、ちゃんと注意しながら生活していかなきゃだめだよね。自分には関係ないって話じゃないんだ!」と一気に言いました。

 いくら気をつけていても、事故を完全に防ぐことは不可能。ただ、小さな気のゆるみが積み重なって、大きな事故につながるのだとしたら、今の自分にできるのは、些細なことにも「注意」を向けることしかない。大事な仲間であるF君の事故を通して、手軽に乗れる「自転車」という乗り物の危険性を十分に理解して、交通マナーやルールを守っていかなければ、と次郎さんは思いました。
 F君の抱えている辛さをどうしたら軽くしてあげられるのか、いつになったらF君が元の生活に戻れるのか、次郎さんたちには分かりません。ただ、今日の集まりを知らせたLINE(ライン)をF君が既読にしていたのを見て、みんなは少し安心しました。

ページの先頭へ