健康便り

11月の健康便り

親知らずに気をつけて —健康—

 あ、痛ッ-。花子さんは頬を押さえました。最近、奥歯の辺りが頻繁に痛みます。歯磨きは食後に必ずしているのに、虫歯かな。歯医者に行くの、いやだなぁ。
 歯の痛みはつらいですね。奥歯のかみ合わせや歯と歯の間などは虫歯になりやすいものです。でも、もしかするとその痛み、親知らずの痛みかもしれませんよ。

 親知らずは智歯とも呼ばれ、概ね10代後半から20代前半に上下左右の一番奥に永久歯として最後に生えます。元々親知らずがない人もいれば、顎骨の中に埋まったまま生えてこない人もいます。
 親知らずは最後に生えることもあって、顎のスペースが不足しがちです。歯が半分しか生えてこない、埋まったまま出てこない、など正常に生えない例が多く見られ、そのために様々な弊害を引き起こします。例えば、歯の一部だけが出ている親知らずの周囲は不衛生になりやすく、歯肉の炎症が起こりがちです。これを智歯周囲炎と呼びますが、親知らずが生え始める大学生の年代でよく見られます。また、磨きづらい位置にあるため、虫歯になりやすかったり、歯が生える時に、周囲の歯肉や隣の歯を圧迫して痛みが出たりすることもあります。親知らずが通常と異なる方向に生えてくると、他の歯を圧迫してかみ合わせに影響を及ぼすこともあるのです。

 一般的に親知らずのトラブルが生じた場合、智歯周囲炎では局所の洗浄や抗菌薬、消炎鎮痛薬の投与などで治療します。虫歯であれば虫歯治療を行います。抜歯が勧められることがあります。次はその一例です。

  • 親知らず、あるいはその手前の歯が虫歯になっている。
  • 親知らずが斜めや横向きに生えている。
  • いつも食べ物がつまる、歯肉の痛みや腫れを繰り返す。

 親知らずの抜歯は、場合によっては全身麻酔や入院が必要になることもあり、抜歯後はしばらく痛みや腫れが続きます。特に下顎の親知らずの抜歯後は腫れることが多く、痛みも出やすくなります。就職してからでは、歯の治療のためにまとまって休みをとるのは簡単ではありません。奥歯の辺りに違和感や痛みがあるようなら、症状は軽くても、休みを取りやすい学生の時期に早めに歯科で対応しておいた方が賢明です。

 歯科を受診した花子さん。痛みの原因はやはり親知らず。医師の勧めで抜歯しました。部分麻酔による短時間の処置でしたが、帰宅後は顔が腫れ、痛くて眠れないほどです。鎮痛剤を服用しましたが、それでもあまりの辛さに、翌日は学校をお休みすることにしました。早めに治療できてよかったですね。

身近な死について —メンタル—

 最近、次郎さんは元気がありません。実家で飼っていた犬のリクが死んでしまったからです。「16歳だったから、人間の歳だと80歳くらいなんだって。すごく長生きしたんだってさ」と弟の三郎の悔しそうな声が電話口から聞こえてきました。夏休みに帰省した時もずいぶん弱っていたので覚悟はしていましたが、こんなにショックを受けるとは次郎さん自身も思っていませんでした。電話を切った後も、しばらく涙が止まらず、スマートフォンに保存しているリクの画像を見ながら、自分でもびっくりするくらい泣き続けてしまいました。

 リクは弟の三郎が生まれた年に、父が友人からもらってきた雑種の犬でした。母は飼うことに大反対でしたが、まだ幼かった次郎さんが必死に頼んで許してもらいました。リクという名前も次郎さんがつけ、「三郎もリクも僕の弟だよ!」と小さな弟たちの面倒をよくみていたのです。犬の年齢は最初の1年で人間の15〜16歳ほどになってしまうので、あっという間に次郎さんを追い越してしまいましたが、いつも次郎さんに甘えてじゃれていたリク。そのリクがもういないなんて…、何日経っても気持ちが落ち込んだままでした。散歩している犬を見かけたり、“愛犬”という文字を目にしたりするだけで、すぐにリクのことを思い出してしまいます。「もっと可愛がってあげれば良かったなぁ…」と後悔ばかりが心に浮かんできました。

 「次郎さん、何かあったの?元気ないみたいね」と花子さんに学食で声をかけられた次郎さんは、我慢できずにリクを亡くした寂しさや悔しさを花子さんに話し始めました。次郎さんの話を聞き終えると「リクは次郎さんの大切な家族だったのね。家族を亡くしたら悲しくて落ち込むのは当然のことだよ。私も経験あるから、その気持ちはよく分かる」と花子さんは言いました。そして、大切な人やペットの死を乗り越えるためにはその出来事を十分に悲しみ、その寂しさや悔しい気持ちを吐き出すことが必要であり、泣いたり人に話したりすることは、恥ずかしいことではないと教えてくれました。「獣医さんが“しっかり悲しんで、きちんと後悔したら、きっと楽しかったことを思い出して、感謝の気持ちに変わっていきますよ”って言ってくれたの」という花子さんの言葉に、次郎さんはとても勇気づけられました。

 “死”は怖くて、残酷なものだと次郎さんは思っていました。今まではなるべく考えないようにしてきましたが、リクを亡くして、初めて“死”を身近に感じるようになりました。いろいろな気持ちが入り混じって、まだはっきりと整理できていませんが、“死”について考えることで、この悲しみを乗り越えてみようと決心した次郎さんでした。

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