健康便り

8月の健康便り

スマホによる健康被害 —健康—

 夏休みのある日、花子さんはサークルの後輩である萌さんから、おしゃれなカフェに呼び出されました。「花子先輩、聞いてくださいよー」萌さんは、最近、夜なかなか眠れず、疲れやすいこと、目や首、肩に痛みを感じていることを一気にまくしたてました。「夏バテとも違う気がするし、萌、神社におはらいしにでも行こうかなと思って」口をとがらせながらも、手からスマホを離しません。ちょっと萌さん、いくらなんでもおはらいって…。

 萌さんは今、スマホゲームに夢中です。電車の中、ベッドに入ってからもスマホが手放せません。スマホなどから出るブルーライトは白熱電球のような暖色系の光と比べて覚醒作用が強く、寝る前にスマホを使うことで睡眠障害を招くことがあります。寝る1〜2時間前は使用をやめて画面を見ないように心がけてみましょう。
また、スマホに夢中になるとまばたきが減り、涙の量が減って目が乾燥し目の表面が傷つく可能性も指摘されています。定期的に目を閉じる、温める、遠くを見るなど、目をリラックスさせることを試してみましょう。

 スマホ操作では、どうしても軽く前にうつむいた姿勢となります。もともと首から背中にかけての骨は緩やかにカーブすることで重たい頭を支えるクッションの役目を果たしていますが、うつむく姿勢は、首がまっすぐな形(ストレートネック)になります。長時間、首の筋肉だけで頭を支えることになると、頭痛、肩こり、首の痛み、めまい、吐き気などの症状が出ることがあります。特にスマホの両手操作は、片手操作よりも頭や首を前に屈曲し、背骨が丸く猫背になって姿勢にも影響することがわかっています。長時間同じ姿勢でいることが筋肉疲労を起こすので、適度に体を動かしたり、入浴や蒸しタオルで肩や首を温めたりして、血流を良くし、筋肉の疲労をとるようにしましょう。
 また、スマホを小指にかけて長時間握ると、小指が変形したり、しびれが起きたりすることがあります。親指で長時間操作を行うことで、親指の付け根近くの腱が炎症を起こす(腱鞘炎)こともあります。親指を伸ばしたり広げたりするときに痛みがあれば、要注意。スマホの使用を控え、使い過ぎた腱を休める必要があります。
 不調や痛みが改善せず、ストレートネックや腱鞘炎などの影響が考えられる場合には、整形外科で相談してみましょう。

 「すごーい、花子先輩って物知り!」萌さんは感心してすぐにスマホをバッグにしまうと、運ばれてきたパンケーキをおいしそうに食べ始めました。「実はね、私も前に萌さんと同じ症状で悩んだときにお医者さんに言われたことの、受、け、売、り」花子さんも照れながらパンケーキをほおばりました。

ゲーム依存 —メンタル—

 就職活動も落ち着き、久しぶりにゼミに出席した次郎さん。再会した皆が元気そうで安心していましたが、福田さんの様子が見当たりません。福田さんは、次郎さんが学期末になるとレポートや試験勉強を手伝ってきた友人です。
 先生に聞くと、夏休み前から出欠連絡も無いままゼミを欠席していて、夏休みに入ってからも連絡の取れない状態が続いているのだそうです。次郎さんからも連絡をしてみましたが、返事はありません。そろそろ卒論の準備が心配になり、福田さんの住むアパートにやってきました。
 「急になんだよ、次郎、お前のせいで負けちまったじゃないか」
 何度もインターホンを押してやっと出てきた福田さんは、以前よりも痩せ、表情は暗く、ひげの手入れもしていない様子です。ゼミを欠席していることを聞いても「どうでもいいだろ、放っといてくれ」などと何だか投げやりになっています。話を聞くと、就職活動が思うようにいかず、挫折を経験し、パソコンゲームに熱中するようになったと言うのです。今もゲーム画面が開いたまま、いつでもプレイできる状態にしてあります。多い時は、40時間続けることもあり、ゲームと睡眠の間で、気が向いたときに食事をする生活を繰り返しているということでした。
 最近、ゲームの依存がニュースで取り上げられることも多いので、以前と様変わりした福田さんの様子を見て次郎さんも心配しています。

 世界保健機構(WHO)が発行する国際疾病分類(ICD)の最新版で、「ゲーム障害」が認定されました。ゲーム障害は「ゲームの実施時間をコントロールできず、生活に支障が出てもゲームを止めることができない」といった依存状態のことを指します。症状が深刻な場合は、ゲーム中に長時間同じ姿勢でいることで、運動不足やエコノミークラス症候群になるなど、身体面での影響が出る場合もあり、注意が必要な障害です。
 ゲーム障害も、その他の依存症と同様に専門家の治療を受けることができます。当事者は、自覚があってもゲームを止めることができないため、周囲のサポートが大切になります。周囲の人の様子で心当たりのある方は、保健所や医療機関、大学の学生相談所などに相談してみると良いでしょう。

 「これがゲーム障害ってことなのかな。確かに、何十時間も続ける自分が怖かったんだ」福田さんにも、思うところがあり、大学のカウンセラーに相談することにしたようです。
次郎さんは、福田さんの様子を見てホッとしながらも、福田さんが辛いときにサポートしてあげられなかったことを申し訳なく感じていました。福田さんの脱ゲーム依存をサポートしていこうと考える次郎さんでした。

ページの先頭へ