健康便り

9月の健康便り

おしりの悩み、恥ずかしがらずに相談を —健康—

 厳しい残暑の日差しに空を見上げると、イワシ雲が広がっています。花子さんは「はぁ…」と大きなため息をつきました。ここ数日便秘がちだったのですが、今朝やっとお通じがきたと思ったら肛門から出血があり、頭の中が真っ白になってしまいました。インターネットで検索すると大腸がんの可能性もあるって…。どうしよう。でも、おしりを診てもらうのは恥ずかしいし。悩みに悩んだ花子さんでしたが、血が止まってからも痛みが続いているので怖くなってきました。以前、子宮頸がん検診でお世話になった先生が相談しやすかったので相談に行くと、女医さんが診てくれる肛門科に紹介状を書いてくれました。受診の結果は「痔」と言われて、ホッと一安心。

 痔には大きく分けて「いぼ痔」「切れ痔」「痔ろう」の三種類があります。
 肛門の内側の血管がふくらんだタイプの「いぼ痔」は、痛みは少ないですが、排便時に出血したり、肛門の外にいぼが飛び出ることがあります。また、肛門の外に血豆のように血管がふくらむタイプの「いぼ痔」は痛みを感じますが、出血は比較的少ないようです。
 「切れ痔」はつよい痛みや出血があり、排便後もしばらく痛みが続くことがあります。
 「痔ろう」は肛門の内側からトンネル状に肛門周囲の皮膚まで貫通した状態です。肛門周囲の皮膚がはれて痛くなり、熱が出たり、膿が出て下着が汚れることがあります。
 治療法は痔の種類と程度により異なり、薬物療法と手術があります。出血が、がんなどの病気によるものではないか確認するためにも、症状が続く場合は病院で診てもらいましょう。

 診察の後、先生から生活の様子について聞かれました。花子さんは最近、卒論や就活に忙しく、朝ぎりぎりまで寝ていて食事がとれず、トイレも我慢してあわてて家を出ていました。外出先ではジャンクフードで空腹を紛らわせたことも…。
 「痔は生活習慣にも原因があるのですよ」と、先生はやさしく教えてくれました。「痔の改善のためにも予防のためにも、まず便秘を治しましょう。便意があったときに我慢せずトイレに行くこと。長時間の座りっぱなしや立ちっぱなしを避け、適度に体を動かすと腸の動きが活発になります。冷房で体が冷えると肛門の周りの血流が悪くなるので、お風呂では湯船につかって体の血行を良くするとともに、肛門の周囲は清潔に。トイレの温水洗浄は肛門への刺激になるので、水圧は強くしないこと。また、ストレスは免疫力が下がり、痔が悪化しやすくなるので、何かリラックスできる趣味があるといいですね」
 花子さんが、友達にフラダンス体験に誘われていることを話すと、先生は出かけてみることを勧めてくれました。乳酸菌や食物繊維の多い食品をとったり、起き抜けに冷たい水や牛乳をコップ1杯飲んだりすると腸が刺激されて便秘の改善になるそうです。アルコールや香辛料などの刺激物、たばこは痔の悪化の原因になるとのこと。

 生活習慣ってバカにできないな。反省した花子さんは、病院の帰りに本屋さんで食物繊維たっぷりメニューのレシピ本を手に取りました。パラパラとページをめくっていたら、将来、誰かのために料理を作る自分の姿を思い浮かべてちょっぴりにやけてしまいました。

「いいね!」を欲しがる心 —メンタル—

 「そろそろ晩御飯にしよう!」
 次郎さんは、川島君と根本君、桐生君のゼミ仲間4人で沖縄にやって来ました。初日から観光名所をドライブし、バーベキューができる海沿いのホテルへ帰ってきました。
 「おい、もういい加減にしろよ、早く食べようぜ」と川島君がイライラしているのは、桐生君が、SNSに投稿するために写真を撮り続けていることが原因です。沖縄に着いてから写真を撮ってばかりで、次郎さんも、その様子が気になっていました。

 「ごめん、ごめん。絶景だから写真撮りたくなってさ。ほら、早速『いいね!』されてる」みんなに謝りながらスマホの画面を見せています。「お前何しに沖縄来たんだ、自慢するために来たのかよ」と川島君はついに怒ってしまいました。
 気になりつつも、川島君が怒るまで何も言えなかったことを申し訳なく思いながら、次郎さんは気持ちを桐生君に伝えました。
 「確かに、川島の気持ちも分らなくないな。せっかく沖縄まで来たのに、桐生が向き合っているのは、僕たちじゃなくてスマホ越しの別の人って感じがする。僕は、楽しくてスマホ持つのも忘れちゃってるけど、桐生は楽しめてないんじゃないかって心配してた。このところ変だけど、何かあったの?」

 「確かに、『いいね!』が増えるのが嬉しくて、だんだんみんなから評価してもらうことに必死になっていたかもしれない。旅行してたくさん写真を撮れば『いいね!』がもらえるって考えで頭が一杯だったと思う。でも、川島が怒るほど嫌な思いさせていることにも、気が付かないくらい夢中だったんだよな。こんなことに必死になって、大事なことの判断もできていなかった。みんな、ごめん。もうやめるよ」
 桐生君らしい、素直で誠実な言葉でした。3人は桐生君の言葉を信じ、4人の中にあったわだかまりは、あっという間になくなりました。

 SNSでは、自分の発信に対して周囲からの反応が得られるため、評価され、認められた気持ちになりやすい面があります。一方で、SNSでの自分は、自分の一面に過ぎません。どれだけ評価をされても、本当の自分を認められていない気持ちが拭いきれず、「もっと多くの人から認められたい」という依存心につながってしまうのかもしれません。しかし、実際に人を支えてくれるのは、自分の良い面、悪い面を理解してくれている人達です。一人の良き理解者の存在が、たくさんのSNS上の評価よりも心の支えになることもあります。
 SNSで評価をされることの優先度が高くなり、現実の人間関係に問題が生じても利用を止められないと感じたら、大学の学生相談所などに相談してみると良いでしょう。

 「ほら、桐生、今こそ出番だ」
 「いや、俺は沖縄にいる間は携帯に触らないと決めたんだ。川島が撮ってくれ」
 「極端だな。店員さん、写真を撮ってもらっていいですか? こいつ抜きで」
 「おい、そりゃないだろ根本! 次郎も何笑ってんだよ」
バーベキューの終わりにみんなで撮った写真は、4人以外は誰も知らない、最高の1枚になりました。

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