健康便り

2014年1月の健康便り —メンタル—

「人のため」にしか動けない人

 いつも他人を優先して、自分のことは後回しにする奉仕精神の豊かな人たちがいます。彼らの中には、人のために何かをすること自体が喜びになっている人もいるようです。

 Lさんは私立大学1年生。サッカーサークルのマネージャーをしています。入会当初からLさんは先輩マネージャーに負けないくらい周りのことによく気が付き、またよく働きました。遠征や合宿にも必ず参加し、50名近いメンバーのユニフォームの洗濯やバーベキューの下ごしらえなど、文句ひとつ言わずにテキパキとこなします。練習後にはLさんが笑顔で「おつかれさま」と迎えてくれるので、メンバーは癒されます。Lさんもみんなのはつらつとしたプレーや、みんなの笑顔を見ているのがこの上なく幸せでした。

 ところがある日、中心選手の一人であるM先輩から「そんなになんでもかんでもやらなくていいよ。みんな甘えるから」と言われました。M先輩はLさんを気遣って言ったのでしょう。しかし、秘かに憧れていたM先輩から言われたことでもあり、Lさんはショックを受けました。翌日、Lさんはやる気が起きず、耳の奥が痛い感じがしてサークルを休んで耳鼻科に行きました。38度の熱があってもサークルを休まなかったLさんが休んだと、サークルメンバーが心配するメールをくれたことはいくらかLさんの慰めになりました。

 医師に勧められて学生相談に来たLさんは、話していくうちにM先輩への強い怒りを感じ始めました。「どうして私が一生懸命やっていることを否定するのよ!」とLさん。しかし、そんなに怒るのは、M先輩にこそ自分の甲斐甲斐しいところを見ていてもらいたかったからでした。2年生になったLさんは、面倒な仕事はある程度、後輩マネージャーに任せるようになり、そうしてできた時間はもっぱらM先輩との楽しい会話に費やされました。みんなの笑顔も大切ですが、自分の幸せも同じくらい大事ですから。

 Lさんは「みんなの幸せこそ自分の幸せ」と考えているところがあったようです。しかし、それはあまり我を通せないLさんが、みんなの笑顔に自分の幸せを託していたということでもあるでしょう。また、自分から人を愛することにためらいがあるために、人から愛されるように一生懸命やるしかないという生き方でもありました。しかし、Lさんは自分の幸せを求める心や、自分から愛する力を取り戻し始めたようです。それは同時に、少し図々しくなるということでもありますが、みんなけっこうそうやって生きているのです。