2019年5月の健康便り —健康—

昼間の眠気と不眠

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 大型連休明けのある日の講義中、舞さんは堂々と居眠りをしている隣の席の男子学生にヒヤヒヤしています。教授が怒った顔で何度もこちらを見るし、思い切って肩をたたいて起こしてみました。枕代わりに組んでいた腕から顔を上げた学さんの顔には、袖口のしわのあとがくっきりとついています。「悪い、悪い。なんだか、すごく疲れててさ」と言いながら、また眠り始める学さんを、舞さんは休み時間に健康管理センターに連れて行くことにしました。

 保健室のような部屋の扉を開けると、少し顔色の悪い学生が看護師さんと向かい合って座っていました。講義中の居眠りについて看護師さんの前で思いっきり学さんに文句を言ってやろうと思っていた舞さんも、思わず口をつぐんでしまいました。でも詩織さんと名乗る学生は、自分は話したいことをもう看護師さんに伝えたからどうぞ、と譲ってくれました。
 学さんは連休中、アルバイトに忙しく、息抜きに夜遅くまでスマホで動画を観ていて寝不足になったと言っています。看護師のモモセさんは、スマホを見ることによって余計に寝つきが悪くなっている可能性を指摘しました。

 人の体の中には生体時計といわれる働きが備わっています。朝、太陽の光を浴びることでセロトニンというホルモンがよく働き、生体時計をリセットし、心も穏やかにします。このセロトニンの働きが悪くなると、気分が滅入り、精神的に不安定になります。逆に夜、パソコンやスマホ、強い照明などの光を浴びると、メラトニンという体を守り、免疫力が下がらないようにしてくれるホルモンの分泌が悪くなります。生体時計の調節がうまくいかない状態が続くと、意欲が低下する、昼間に眠くなる、勉強の能率が落ちる、判断能力が鈍くなる、体調が悪くなる、イライラして攻撃的になる、といったことが起こります。
 学さんは連休中から夜更かしが始まり、日中の眠気と疲労感を感じていました。でも、まだそれほど体調や日常生活に支障を来たしていないことから、今夜からは眠る前にスマホで動画を観る生活を改めることにしました。
 モモセさんは学さんに、「日中に適度な運動をする」「夕食後はカフェインを含む飲み物を控える」「リラックスできる音楽を聴く」「室内をくつろぎの環境に整える」など、良い眠りを得られる方法をアドバイス。「それでもどうしても昼間に眠くなる時には、20~30分程度の昼寝をするのもいい」とのことでした。

 「私はパソコンやスマホを見たりしていないし、早く寝たいのに、入学してからずっと、夜ベッドで寝ようとしても眠れない」詩織さんはポツリと言いました。モモセさんは詩織さんに、健康管理センターの心理相談の利用を勧め、予約の取り方を説明しました。
 舞さんと学さんは顔を見合わせてうなずくと、詩織さんに「何か困っていることはない?もしよかったら話を聞かせて」と声をかけ、ランチに誘いました。