2012年4月の健康便り —メンタル—

新しいスタートを切るために

新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。在学生のみなさんも新年度を迎えますね。そこで今回は、新しいスタートを切るための心の準備について考えてみましょう。

新生活や新年度を迎えると、私たちはよい出会いを期待するものです。いい先生や気の合う友だち、おもしろい講義や居心地良いサークル、没頭できる趣味を見つけられるかな、と楽しみになります。ゼミの指導教授は優しい人かな、と考えたりもします。

一方で、居場所を見つけられず、一人ぼっちになってしまうのではないかという不安もあります。ですが実際には、この不安に対して私たちは予防策を取っているものです。勉強や研究に集中する人、積極的に人に話しかけ、サークルに顔を出す人もいます。逆に、誰か話しかけてくれると思って気長に待つ人もいるでしょう。そもそも一人が好きだという人もいますよね。
いずれにしても、期待には希望がありますし、積極的に動くにせよ、気長に待つにせよ、不安を小さくするための予防策があります。

ところが苦しいのは、「自分にはよい出会いなんかない」、「なにをやっても自分はモノにならないし、楽しいことなんてない」という考えを持つ場合でしょう。これまで満足や自信につながる経験を持てなかった人はこう考えがちです。

最初から「よいことはない」と決めてしまうと、自分に関心を持つ人や、自分の可能性を広げてくれる何かに出会っても、目に入らなくなってしまいます。すると、よいものが目に入らない→「よいことはない」という考えは本当だと感じる→その考えが強くなる→ますますよいものが目に入らない、という悪循環に陥ってしまいます。自分の考えと現実との区別ができなくなっているのです。

その要因の一つには、よい出会いを期待しすぎている場合があるのではないでしょうか。そうなると、どんなよい出会いにも満足できず、キリがなくなってしまいます。希望というより、欲望に近いかもしれません。欲張りな人ほど満たされないのですね。

おそらく私たちは、期待がほどよく、不安が和らいでいるとき、ゆとりと思いやりをもって人と関わることができるのでしょう。また、自由な想像力をもって、ものごとに取り組むことができるのです。みなさんにほどよい出会いがありますように。