2012年8月の健康便り —メンタル—

家族と自分

みなさん、夏休みはいかがお過ごしでしょうか。大学生というのは家族から自立して社会に自分の居場所を見つける途上にあります。ですが、夏休みになると久しぶりに家族と接する時間が増え、家族との関係を振り返ることもあるかもしれません。

私たちは否応なく家族の影響を受けています。家族の良いところは受け入れやすく、自分もその美点を受け継いでいると嬉しくなるでしょう。家族の悪いところを好きになるのは難しいですが、自分はそうならないようにと思えば成長につながります。そして自分にも似たところがあると知れば、寛容さが生まれるかもしれません。いずれにせよ、家族から受けた影響を受け入れることから、自分探しは始まります。

ところが自分の性格や置かれた状況が受け入れ難く、それがすべて家族のせいだと感じられる場合、出口のない苦悩に陥ってしまいます。

メンタルヘルス相談窓口にも、家族に関する相談が寄せられることがあります。そんなとき、カウンセラーは相談者の家族を責めることをあまりしません。それよりも、相談者が家族の中で何を感じ、何を求めているのかということに焦点を当てます。
たしかに、一緒に家族を糾弾してもらえたら、相談者は「自分が正しかったんだ」と安心できるかもしれません。しかし、家族を責めているだけでは、相談者を無力な犠牲者の立場に追い込んでしまいます。「私にはなにもできなかった。家族に埋め合わせをしてもらうまでは前に進めない」と。
それは間違いではないかもしれませんが、家族を恨み、罪滅ぼしの要求を際限なく繰り返すことにつながります。結局、相談者が家族から自立するのを妨げてしまうのです。大切なのは、相談者の心を恨みで埋め尽くすことではなく、どうしたら自分は幸せになれるのだろうと考えられるスペースを作っていくことなのです。

家族関係を考えるのは過去を取り戻すためではなく、自分の成り立ちを知り、これからの自分について考えるためです。今の家族を正そうとするよりも、自分の未来へのヒントを見つけられるといいですね。