2012年9月の健康便り —メンタル—

人は自分を映す鏡

月が美しい季節になりました。月の模様を、日本ではウサギがお餅をついているように見えると言います。ドイツでは薪を担ぐ男に見えるそうです。それぞれの国民性を反映しているのでしょうか。

ロールシャッハという心理テストでは、図版カードの模様を見せた時の反応から、ものの見方や考え方の特徴を推測します。同じものを見たことに対する反応のバリエーションは、見る側の心のありように影響されるのです。このように、私たちは常に現実を客観的に見ているわけではなく、自分の心を重ね合わせて見ているのです。

同じような心の働きが悩みの種になることもあります。例えばよくあるのは、メールを出した相手からの返事が遅いときです。「私のこと嫌いなのかな」、「怒っているのかな」、「私の優先順位は低いんだな」、などと不安になります。

これを単にマイナス思考として片付けず、自分の心の反映と考えるとどうでしょう。まず、「私のこと嫌いなのかな」という不安が、「私は好かれない」という自信のなさの反映だ、というのはわかりやすいでしょう。しかしさらに言えば、「人を嫌ってしまう自分」を相手に重ねているとも考えられます。メールが遅いくらいで人を嫌いになる偏狭な人になりたくないので、「人を嫌いになる」傾向を相手に重ねて、「相手が自分を嫌う」と感じるわけです。でも、本当は「自分が相手を嫌っている」のかもしれません。実際、よく自己観察してみると、返事が遅いことにかなり腹を立てている自分を発見したりします。

このように考えていくことは苦痛を伴うものです。自分の嫌いな部分を認めることになるからです。しかし人間にはだれでも良い面と悪い面があります。自分の悪い面を受け入れている人は、他人の悪い面にも寛大になれるでしょう。また、いつもポジティブでいようと無理をする必要もなくなります。

だれでも見たり、体験したりすることに対して、必要以上にマイナスに考えてしまう時、それはもしかすると「自分の嫌な部分を見ているのかな」と考えてみてはどうでしょう。広い心で人と付き合えるようになるのではないでしょうか。