2013年1月の健康便り —メンタル—

夢には意味があるの?

みなさん初夢は見ましたか。昔から「一富士、二鷹、三茄子」といって、初夢の吉凶を占ったものですが、夢には何か意味があるのでしょうか。もちろん、「蛇の夢を見たら金運が上がる」という類の夢占いは、飲み会のネタにしかなりません。しかし、自己理解を深める入り口として、夢を考えることもできます。

脳科学的には、夢は脳が記憶を整理している過程であるという説があります。この説によれば、夢はもともと断片的な記憶の羅列です。しかし、私たちがふだん目覚めたときに覚えている夢は、意識的な記憶に残る際にストーリーづけされたり、つなぎ合わせられたりして、加工されています。ですから、私たちが「こんな夢を見た」と言って語る内容は、無意識の取捨選択や思考を反映している可能性があります。

そのような視点から、夢を自己理解に利用した最初の人物はジークムント・フロイトでした。フロイトの夢理論は、夢占いに近い部分もありましたが、神経科学につながる仮説や、夢を治療に活かす技法の兆しもありました。それを後の精神分析家たちが洗練させました。現在も、精神分析やユング派の心理療法では、治療の技法として夢を重視します。

その方法は、夢について連想を聞くことです。同じものが出てくる夢でも、人によって思い浮かべることは違います。たとえば、富士山の夢を見て、「自分にはとても登れません」と言う人と、「とても雄大な気持ちで雲海を見下ろしました」と言う人とでは、自尊心のあり方に違いがありそうです。前者は、大きな課題に直面して尻込みしているのかもしれません。自信がなさそうです。後者は、自分が富士山になったような気分で気力充満ですが、ちょっと過信があるかもしれません。このように、連想を聞くことによって、「富士山=縁起がいい」という単純な理解ではなく、その人にとっての個別的な意味が明らかになってきます。

実際の心理療法では、もっと多面的でインパクトのある扱い方をしますが、自己理解の入り口として、自分の夢について連想を膨らませてみるのもよいでしょう。そのとき大事なのは、無意味な思いつきも無視しないことです。どこからどこにつながるか、やってみるまでわからないからです。ふだんとはまったく違う視点で自分を見ることができるかもしれません。