2013年11月の健康便り —メンタル—

社交性の二種

 社交的な人はいろいろな面で社会適応能力を持っていますが、その背景にはまったく対照的な性格がかかわっていることがあります。また、社交的な人は人間関係の悩みなんてないだろうと思うかもしれませんが、それぞれに不安や葛藤を抱えてもいます。

 Iさんはサークルのムードメーカーです。人を楽しませるのが上手で、引っ込み思案な人にも優しく話しかけてみんなの輪の中に入りやすくしてあげます。自宅に友達を招くのも好きで、週末は朝まで楽しく飲み明かすこともしばしばです。みんなもIさんに好感を持っていてIさんに誘われると喜んで遊びにでかけます。ただ、深酒をして「みんなずっと友達でいような」と情熱的に語り、泣き上戸になるIさんには、いささか閉口してしまいます。Iさんは本当に人といることが大好きという様子です。しかし、予定のない日曜日には何もする気が起きません。なんだか自分が世界で一人ぼっちになった感じがして、寂しくてたまらなくなるのです。みんなと一緒にいることこそ、Iさんが求めてやまないことなのです。

 今度はJさんの生活をのぞいてみましょう。クラスで飲み会をするといえば、いつも幹事を任されるのがJさんです。Jさんはいつもお洒落なお店を選んでくれます。一人一人の個性をよく理解して、その人の魅力が際立つタイミングで話を振ったり、その人にみんなの注目を集めたりします。自分はあまり表に立たず、控えめで洗練された気遣いには隠れファンもいるようです。Jさんはみんなが楽しく過ごせたことに満足し、二次会には顔を出さないこともあります。みんなのJさんへの信頼は厚いのですが、「社交的で気遣いができる人」ということ以外にJさんのプライベートを詳しく知る人はほとんどいません。Jさんが友達を自宅に招くことはありません。休日は映画を見たり、小説を読んだりして静かに過ごします。小説に出てくるような大恋愛をしてみたいと思いつつ、現実にはそこまで踏み込むことができません。もし隠れファンに告白されても、社交的に相手を楽しませながら、肝心のお付き合いのほうはうまくかわしてしまうでしょう。

 Iさんは寂しがりやで、誰かにそばにいてもらうために社交性を発揮しています。それが、少し度を超えると「あつくるしい人」になってしまいます。Jさんはむしろ、心からの付き合いをすることが不安で、社交性という魅力で身を固め、自分自身を見せません。みんなはJさんに楽しませてもらえるので、Jさんのプライベートがわからないということがそれほど気にならないのです。でも、Jさんのことを本気で好きになった人は、Jさんの心に自分が住んでいないと感じてやきもきするでしょう。
 対照的な二人ですが、それぞれ人知れず悩みも抱えているようです。

 ※上記事例は、「学生生活無料健康相談テレホン」の複数の相談例に基づいて創作した架空の事例です。