健康便り

2013年12月の健康便り —メンタル—

正論だけでは通らない

 「自分は正しいことを言っているだけなのに、なぜかみんなわかってくれない」。そんなことはありませんか。今回はそういう例について考えてみましょう。

 大学生のKさんはある講義でグループ発表をすることになり、グループのメンバーたちとカフェに集まって準備をしていました。みんな意味のない話をしていて、なかなか発表の話にならないので、Kさんは待ちくたびれてきました。そこで、発表の話題を出して、どのような発表にしたらよいかKさんの意見を述べました。論理的に話して、みんな賛成してくれました。しかし、話し終えたところでメンバーの一人がため息をつき、「まあ、みんなの意見も聞こうよ」と言いました。

 今度は同じ場面を、Kさんと一緒にいた他のメンバーの目から見るとどう映るでしょう。発表の準備とは言っても、まずは他愛のない会話で互いの緊張をほぐしていきます。こうしてお互いどんな人か、なんとなくわかるものです。そうしていると突然Kさんが発表のことについて話し出しました。少しめんくらいましたが、「Kさんは真面目なんだな」と思ってKさんの話を聞きます。たしかにKさんの話は説得力があります。ただ、Kさんは発表の計画を一気に話すつもりらしく、もう10分以上話し続けています。さすがにうんざりしてきましたが、熱を込めて話しているKさんを止めるのも悪い気がしてもう少し待つことにします。みんなの表情を見ると、みんなも同じ気持ちみたいです。そのうち一人が「まあみんなの意見も聞こうよ」と言ってくれたので、ようやく救われた気持ちでした。

 二人の視点を比べると、Kさんは人の心の内側を想像できないことがわかります。「他愛のない会話」でみんなが気持ちのつながりを作っていることを理解できないので、「意味のない話」としか思えないのです。同様に、みんながうなずいて聞いているときに、内面では自分に気をつかって待ってくれているのだ、と想像することは困難です。これは人の気持ちを無視するのとは違います。無視というのは、相手が待っているのをわかった上で、言わない方が悪いと考えて放置することです。Kさんの場合は、みんな賛成していると素直に信じていたのです。

 しかし、これでは人の気持ちを考えない人ということで、Kさんの評判は悪くなってしまうでしょう。Kさんはその理由がわからず、もし逆に怒ったりすれば対立が生まれます。みんなはKさんに悪意がないことを知る必要があります。そして、Kさんは人には直接言わない考えや動機があることを知る必要があるのです。