2014年2月の健康便り —メンタル—

嫌われ恐怖

 「人に嫌われるのが怖い」という悩みが現代の若者には多く見られるように思います。良い時も悪い時も、「まあこれが自分だ」と思えることは、達成することが難しい心理的課題になっているのでしょう。

 Nさんは人からどう思われているのか気になって、大学にいるときは気持ちが休まりません。講義では後ろから見られるのが不安なので、いつも一番後ろの席に座ります。クラスコンパではそんな不安を吹き飛ばそうとお酒をいっぱい飲みますが、記憶をなくして後で落ち込みます。酔った自分が何をしたのか、おそるおそる友達に聞いても、それほどひどいことをやっていたという話は聞きません。しかし、みんな言わないだけで、本当はひどいことをやってしまっていて、嫌われているのではないかと心配になります。

 客観的に見ても、Nさんには決しておかしなところがあるわけではありません。成績もわりと良い方ですし、友達も多くいます。服装にもよく気を使っていて、Nさんにファッションのアドバイスをもらいにくる友達もいるくらいです。趣味も多く、夏はキャンプにバーベキュー、冬はスノボを楽しみます。凝り性で、お店で出るような料理を自分で作りますし、流行のお店のこともよく知っています。

 しかしNさんには我を忘れて没頭できるものはありません。これほど多趣味になったのも、常に流行を取り入れて自分を魅力的にしておかないと、すぐに人から飽きられてしまうと思うからでした。一人で料理しているときですら、いつかそれをみんなの前で披露するときのことばかり考えています。

 Nさんはあまりパッとしない友達や、あまり遊ばないでマイペースにやっている友達のことを、「もっと楽しめばいいのに」と少し軽蔑して見ています。しかし心のどこかで、彼らを羨ましいとも感じています。なぜなら、彼らはNさんよりも魅力がないにもかかわらず、そのことをそれほど気にしていないように見えるからです。彼らには彼ら同士で分かり合える友達がいるのです。

 誰しも人から評価されたいという気持ちを持っています。しかし、それがないと自分の価値がわからなくなってしまうほど極端になると問題です。そうなると、人からの評価を失わないことがすべてになり、嫌われ恐怖に陥ってしまいます。たとえ評価されなくても、自分の存在を認めてやれる自分がいること、それが大事なことです。