2014年6月の健康便り —メンタル—

退学しようか悩んだときに

 学生生活無料健康相談テレホンのこころの相談窓口には、「大学の授業に興味が持てない」「このまま大学を続けられるか不安だ」という相談がよく寄せられます。「いっそのこと退学して全てをリセットしてしまいたい」と考える人も少なくありません。
 大学生活のスタートで感じる「何か違う」という‘違和感’は誰もが抱きうる感覚です。希望の大学に合格できず、自分の意に添わない不本意な入学をした人は、特にそう感じやすいかもしれませんね。最近では、「人間」「情報」「文化」「総合」など、抽象的な名前の学部や学科が増え、所属する専攻ではやりたいことができないと入学後に分かった、という場合も多いようです。
 理想の大学生活のイメージと現実とのギャップ、その‘違和感’にどう折り合いをつけるかということは入学後の重要なテーマといえるでしょう。

 もし、今あなたが悩みを抱え、退学を検討しているのなら、まずは‘退学した後の自分’をイメージしてみてください。退学した自分は、1年後、3年後、5年後…にどうなっているのか、現実的に考えてみましょう。
 やりたいことがはっきりしている人は、再受験や転学部などの進路変更を具体的に考えてもよいかもしれません。もしくは、興味のある資格をとるため、大学に籍を置きながら専門の学校に通う、ダブルスクールという選択肢もあるでしょう。
 退学後の自分をいまひとつイメージできない人、退学しない方が得かもしれない、と感じた人は、とりあえず今の状況に踏みとどまってみませんか。そして、今感じている‘違和感’をどう解消していけばよいのか考えてみてください。
 今やっている勉強の中で、将来就きたい職業に役立つものはないでしょうか。もしくは、どんな仕事に就きたいのかを考えるヒントは隠れてはいませんか。
 例えば、スポーツ関連の仕事に興味がある人は、経済系の授業が、スポーツビジネスを経済の分野から考える際に活かせることがありますし、心理学系の授業は、選手のメンタルトレーニングなどで役に立つことがあります。
 気づかないだけで、将来の糧となる材料は他にも見つかるかもしれません。目指すもの、やるべきことの見通しがたつと、自然と興味の幅は広がってくるものです。大学を卒業するメリットを見いだせることもあるでしょう。

 しかし中には、卒業することの価値を分かってはいても、大学に通い続けることに抵抗を感じる人もいると思います。その場合には、疲れた心を休ませるため、‘戻れる場所は確保’して休学することも手段の一つです。なぜ大学生活に馴染めないのか、変わるためには自分に何が必要かを、一歩下がって見つめ直してみるのです。休学しながらボランティアやアルバイトを経験することで、自分がやりたかったこと、そのために大学で学ぶ必要があることを再認識できた、という人も少なくありません。

 大学で吸収できる事はたくさんあります。それについて考える機会と時間があるのが大学生です。自分の中の‘違和感’、うまくいかない弱い面も含めて、学生時代に自分と向き合う時間や体験は、社会に出てからの自分の支えになってくれるのではないでしょうか。