健康便り

2014年7月の健康便り —メンタル—

「過去の記憶」と「今の感情」

 嫌なイメージを思い出して、なんとなく沈んだ気持ちになることはありませんか?
 過去に失敗したことや怒られたこと、傷ついた出来事…、思い出したくなくても、嫌な記憶が頭に浮かんで、つらい気持ちも一緒に再生されてしまう。そのような経験がある人もいると思います。
 しかし、過去の傷つきにとらわれすぎていると、自分の今の気持ちや、本当にやりたいことが見えなくなることがあります。何か新しいことを始めようと思っても、「またあの時みたいに傷ついたら…」と、「過去の記憶」と照らし合わせて否定的なイメージのスイッチが入ってしまうのです。すると、「今の感情」まで不安でいっぱいになってしまいます。

 例えば、あなたが過去にAさんという人物に意地悪をされたことがあるとします。Aさんと関わったことで、あなたはひどく傷つき、Aさんに対してとても嫌なイメージしか持てませんでした。
 それから月日が経ち、Bさんという人物と知り合いになりました。しかし、Bさんのことは初対面の時から「なんとなく嫌な人だな」と否定的なイメージしか持てません。Bさんと接すると、いつのまにか表情がこわばり、そわそわと落ち着かない気持ちになってきます。あなたは、次第にBさんだけでなく、Bさんとつながりのある共通の友達や、楽しみにしていたその友達との集まりからも距離をおくようになってしまいました。
 なぜでしょうか。Bさんは、過去に意地悪をしてきたAさんになんとなく雰囲気が似ていたのです。Bさん自身は、とても親切で優しい人であったとしても、あなたにとっては、「意地悪するような人だろうから、近寄りたくない」と過去の古傷が騒ぐ対象でしかありません。目の前の出来事に反応するよりも前に、過去の感情を再び味わってしまっているのです。

 このように、過去の記憶にとらわれすぎるために、今、目の前にいる友達をなくしたり、自分が望んでいることを我慢したりしてしまうのは、もったいないと思いませんか。
 過去の出来事は変えられませんし、記憶を消し去ることもできません。しかし、新しい記憶を重ねていくことで、つらかった出来事のイメージが変わってくることはあります。
 前に進めずに立ち止まってしまう時、気持ちを向ける方向を「過去」ではなく「今」に切り替えてみましょう。「また同じことになったらどうしよう」と後ろ向きになるのではなく、実際に目の前で起こっている出来事、目の前にいる人、その人の言葉や態度はどうなのか…、今の現実そのものからスタートしてみることです。「なぁんだ。今度は大丈夫そう」とホッとできる瞬間を積み重ねていくことで、少しずつ過去のつらい記憶も和らいでいくかもしれません。
 過去は、過去。今は、今。「今と過去はちがうんだ」と心の中でつぶやいてみてください。過去にあったことは、今は起きていないし、これから起こると決まっているわけでもありません。「今の感情」は、これから自分で作ることができるのです。