2014年10月の健康便り —健康—

若者に多い気胸

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 大学生協の学生総合共済発表によると、2012年度の生命共済支払実績のうち、病気のなかで一番多いのが「自然気胸」です。あまり耳馴れない病名ですが、皆さんご存知ですか?
 学生生活無料健康相談テレホンには「友人が気胸になったと聞いたが、どんな病気か」などという相談が入ります。今回は、若者に多い「気胸」について簡単に解説します。

 肺は胸膜という薄い膜で、二重に覆われています。内側の胸膜を肺胸膜、外側の胸膜を壁側胸膜といいます。その二重の胸膜の間にある空間が胸膜腔です。胸膜腔は肺の中よりも圧が低く、肺が膨らむようになっています。様々な原因によって胸膜が破れ空気が胸膜腔に入り込むと、圧力の違いで張っていた肺がしぼんでしまいます。この状態を気胸といいます。

 気胸の中で多いのは、肺と肺胸膜の間にできた空気の袋が破裂して胸膜に穴が開く、特発性自然気胸と呼ばれるものです。原因は不明です。10歳代後半から30歳代に多く、痩せた長身の男性に多く発生します。胸痛、息切れ、咳などが主な症状で、気胸の起こった側に突然胸痛が生じるのが特徴です。
 自然気胸の治療は、胸膜腔からの空気の排除と気胸の再発防止です。自然気胸では一時的に空気が漏れますが、多くはすぐに閉じてしまいます。自覚症状が少なく気胸の程度が軽ければ特に処置の必要はありません。医師の指示のもと自宅安静で胸膜腔に漏れた空気が自然に血液中に吸収されるのを待ちます。痛みや呼吸困難の症状があれば入院する場合もあります。中等度以上の気胸では、胸膜腔内の空気を外に排出する胸腔ドレナージを行います。自然に穴がふさがらない、再発しているような場合は手術になることもあります。気胸は再発することが多いので、気胸の再発を避けたい場合にも手術を選択することがあります。種々の薬剤を胸膜腔に注入し、人工的に炎症を起こして胸膜を癒着させ、穴を防ぐ治療法もあります。
 そのほか気胸には、肺がんや肺気腫など肺の病気が原因で起こる続発性自然気胸、交通事故などでろっ骨が肺に刺さるといった胸部外傷によっておこる外傷性気胸、病院で針を刺すような治療や検査に伴う医原性気胸などがあります。また、女性特有の続発性気胸として、月経開始日前後に気胸を発症する月経随伴性気胸があります。

 若者に多い特発性自然気胸は命にかかわることはあまりありませんが、きちんと治療をしないと思わぬ病気を引き起こすことがあります。また、生命に危険が及ぶ場合もあります。突然胸痛が起こる、息苦しいなどの症状が出た場合は早めに受診し、医師の指示に従いましょう。