健康便り

2015年11月の健康便り —メンタル—

SNSとの付き合い方

 気胸で調子が悪かった次郎さんですが、ずいぶんと体調も回復してきました。お見舞いに来てくれた花子さんとも仲良くなって、スマホのメッセージアプリLINE(ライン)で頻繁にやり取りをする仲になりました。でも、なんだか花子さんとの意思疎通がうまくいきません。なぜか誤解してしまったり、ズレてしまったりと、もどかしいやり取りが続いてしまいます。

 スマホなどを使ったコミュニケーションは、私たちの日常に深く浸透していますので、それらを使わずに生活することは難しいことでしょう。でも、ときにはトラブルの原因にもなってしまいます。そこで、現実世界の成り立ちから、ネットでのコミュニケーションの特徴について吟味してみましょう

 私たちの現実世界は、いくつかの特徴に分けて把握することができます。まず、最も身近な世界は、目で見て、手で触れることができる、直接的な現実の世界です。次郎さんの手元には、花子さんからもらった本があります。この本に触れたときに感じる直接的な疑いのなさは、あらゆる世界体験の基礎となっていると言えます。

 次にこの本の中に広がっている世界があります。先月掘り下げた書き言葉の世界ですね。これは、情報だけによって作られた世界ですので、その現実感は、その内容に確信を抱けるかどうかにかかってきます。例えば、次郎さんの実家の裏には山があり、その山の向こうには街があります。次郎さんはその街に行ったことがありませんが、“街がある”という情報は次郎さんにとって疑いようがないものです。もしもこの確信が揺らぐようなら、次郎さんは山を越えて、本当に街があるのかを確認することができるでしょう。このように、情報の世界では直接的な現実に立ち戻って、その現実感を確かめることができるという特徴があります。

 もうひとつは物語の世界です。この世界は、情報の世界の延長です。人間の持っている推論の能力は大変な力を持っていますので、死後の世界や宇宙の果てについてまで、現実から遊離した物語を生み出すこともできます。物語の世界となってしまうと、隣町に行くように現実感を確かめることは難しいですね。

 さて、ネットを介してのコミュニケーションの特徴についてです。ネットの世界は、まずは情報の世界と言えそうです。情報の世界ということは、推論の能力を使って物語を作り上げることが可能です。もし、現実的な根拠が希薄なまま推論を繰り広げて、現実から遊離した物語を作り上げてしまったら、偏った妄想的な考えに陥ってしまうこともあるでしょう。

 特に、目で見て手で触れる直接的な体験が希薄な場合は、現実から遊離しやすいかもしれません。実は、次郎さんは女の子とお付き合いをしたことがありませんでした。女の子がどんな考え方をして、どんな行動をするのか、想像の中でしかわからなかったのです。これでは現実から遊離した物語に陥りやすくなり、誤解やズレが生まれてしまいますよね。

 LINEでのやり取りにもどかしさを感じた次郎さん。勇気を出して、今度2人でランチをすることを提案してみました。なるほど、直接会って、花子さんことをよく知ろうということですね。初めてのことなのでドキドキだと思いますが、うまくいくといいですね。