2016年4月の健康便り —メンタル—

不安への対処

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 新年度を迎えたキャンパスには、初々しい1年生のグループが目立ち、どこへ行くにも3〜4人が一緒になって移動しています。特に女の子たちは学食や教室で、賑やかに“群れ”ています。しかし、それとは対照的に中庭のベンチの端に一人座ってスマホをいじっていたり、学食でうろうろと席を探していたりする学生も目につきます。

 高校生まではクラス単位でものごとが進んでいくことがほとんどですから、朝、教室に行けば自分の席があり、クラスという特定のグループに属している安心感がありました。ところが大学に入った途端、一人で行動しなければならないことが多くなります。慣れない環境の中で知り合いもいない中、不安になるのも当然でしょう。

 漫画研究会に体験入部した1年生と一緒に、学食で昼食を食べていた次郎さんは、「先輩、うちの学校にはスピード席ってないんですね」と言われました。スピード席とは、文字通り“急いでいる学生が使う席”のこと。一般的に学食は大テーブルに相席が普通ですが、グループに占領されたりしていると、一人では使いにくい雰囲気があります。「一人ぼっち」と思われるのは恥ずかしいけど、スピード席なら素早く食事を済ませて席を立てばいいので、一人でも使いやすいという理由から、最近、導入する大学が増えているのです。しかし、次郎さんの大学には、まだスピード席はありません。

 「スピード席があれば、少しは安心なんだけどなぁ…。大学生ってみんな大人じゃないですか。正直、怖いですよ。一人だとめちゃめちゃ不安で…。先輩は1年の頃、不安じゃなかったですか?」と聞く後輩の顔を見ながら、1年前、親元を離れて上京してきた次郎さんも、この後輩と同じように緊張と不安でいっぱいだったことを思い出しました。

 「どうやって不安を克服したんですか?」

 克服?どうしたんだっけ?そうだ、オリエンテーションの時、隣に座ったA君が声をかけてくれたんだ。彼もきっと不安だったはずなのに、自分から見ず知らずの僕に声をかけてくれた。勇気あるなぁ…と思ったけど、嬉しかった。A君と話せるようになったから、僕もB君に声をかけることができたし、それから友達もだんだん増えて、いつの間にか不安もなくなっていたんだよなぁ…。

 周りの人たちとつながりができたことで、不安が解消されたことを次郎さんは体験したのです。それまでの次郎さんは、他人に干渉されることがとても苦手でした。でも最近、誰かとつながっている安心感があるから、一人を楽しむことができるんじゃないかと思うようになりました。一人の時間と、つながりのある時間。どちらも大切で、豊かな生活を送るためには必要なものだと気づきました。

 「不安に負けないためには、自分からひと声かける勇気ですね!」と笑う後輩を見て、大きくうなずく次郎さんでした。