2016年6月の健康便り —メンタル—

卒業後の進路を考える

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 漫画研究会の部室で、次郎さんが次の作品の構成を考えていると、「ジロちゃん、元気?」と疲れ切った顔のY美先輩が現れました。4年生のY美先輩は、就活真っ最中。
 「まあまあ、元気ですよ」と答える次郎さんに、「2年生はいいね〜、今のうちに楽しんでおきなさいよ!」と言いながら、部室の椅子に崩れるように腰掛けました。

 Y美先輩は就活と並行して、7月に行われる教員採用試験を受験する予定です。英文科に在籍しているものの、漫画研究会で一番の画力を活かして、商品パッケージやロゴのデザインをするような仕事に就きたいと思っています。しかし、地方に住む両親からは「就職するなら、地元で役所か教師」という条件を突き付けられ、何度話し合っても理解してもらえず、仕方なく教員採用試験を受けることで、卒業後も東京にいることを許してもらったそうです。

 「地元で役所か教師って選択肢、ひどいと思わない?まあ、田舎だから公務員が最強で、安定第一っていう親の価値観も分かるし、私のことを心配してくれているのも分かる。でも、私は他にやりたいことがあるから、それを目指して就活しているのよ。子どものやりたいことを応援するのが、親ってもんじゃない?今までは何でも、“自分で決めなさい”って言ったのに、就職だけは親の意見を聞けっていうのは納得できない!」と悔しそうなY美先輩の話を聞きながら、次郎さんは自分だったらどうだろう?と考えていました。

 Y美先輩はデザイン系の仕事をしたいというはっきりした希望があるが、僕は今のところ、楽なところに就職できればいい、と思っている。こんなことを言ったら、親父は「それでも男か!一生の仕事をなんだと思ってるんだ!」と精神論をぶちかましてくるだろう。母親は僕の体(小さいころ心臓の手術をしている)を心配しているから、地元で就職することを望んでいるはずだ。Y美先輩は東京で就職すると決めているが、僕は別にどこでも構わない。でも地元だと東京より会社も少ないし、どんな仕事があるんだろう?結局、僕は将来について何も考えていないんじゃないか?自分の考えをもっていないと、親の価値観を押しつけられても、反論もできないじゃないか。それよりも就活で、どういう仕事を選んだらいいのか、どんな会社を受けたらいいのか分からないのはまずいよね…。4年生になったら自然と考えがまとまってくるのだろうか?このままだとヤバいな。

 「Y美先輩はいつごろから、就職について考えていたんですか?」と思わず質問した次郎さん。2年生の時に小さなデザイン事務所でアルバイトした頃から、こういう仕事もあるんだなぁ、と思っていろいろな会社を調べるようになったとY美先輩は教えてくれました。

 「私はやりたいことがわりとはっきりしているから企業も絞りやすいけど、何がしたいか分からないで就活している友達も多いよ。親の言うことに振り回されて疲れ果てている人もいるしね。卒業した先輩が“やりたいことが分からなかったら、これだけは絶対にやりたくない!っていう仕事を外せばいい”って言ってたの。だから地元で公務員になるのだけは無理だって、親と戦ったんだけど、結局妥協しちゃった。でもさ、教員採用試験に落ちて、こっちで就職決まったら親もあきらめると思わない?」と不敵な笑みを浮かべるY美先輩を見て、まずは自分がやりたいことは何か、卒業後の未来について、真剣に考えてみようと心に誓った次郎さんでした。