2017年2月の健康便り —メンタル—

承認欲求について

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 久しぶりに部室でのんびり漫画を描いている次郎さん。その隣で後輩のW君がスマートフォンと格闘しています。「さっきから、何してるの?」と次郎さんが声をかけると、LINEの返信、FacebookやTwitterへの“いいね!”や“コメント”をやり続けているというのです。「結構、“友だち”が多いんですよ。まめにやらないと僕もスルーされちゃいますからね。でも…、結構、疲れます」とW君は最近の悩みを次郎さんに話し始めました。

 大学に入って交友関係も広がり、SNSでの“友だち”も増えたW君。最近、他人の目が気になったり、嫌われたくないという気持ちが強くなったりして、みんなに“いい顔”をしなければいけないと思うようになったとのこと。「相手からのリアクションがないと不安になるし、顔を合わせても話が盛り上がらないと、自分が悪いんじゃないか? と思ってしまうんです」と深刻な表情で話すW君のことが、次郎さんも心配になってしまいました。

 広く浅いつながりはあるけれど他人に本当の自分を出すのが怖い、誰かに認めてもらえないと自分の存在価値も分からない…。こういう悩みは多くの人のなかにもあるかもしれません。
 人は誰でも他者から認められたい、尊敬されたいと思っています。このような感情を“承認欲求”といい、アメリカの心理学者アブラハム・マズローが提唱する「欲求の5段階説」では、5つの欲求(生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求)のうち4番目の欲求に位置付けられています。
 承認欲求には、W君のように他人から認められたいという“他者承認”と呼ばれるものと、今の自分に満足しているか、自分自身を認めているかという基準で判断する“自己承認”と呼ばれるものがあります。他者承認を求める気持ちは誰にでもある健全なものですが、それが強くなりすぎると精神的なバランスを崩してしまう可能性もあります。

 「僕はW君ほど友だちも多くないし、周りの人にすごく認めてほしいと思わないけど、言いたいことはよく分かるよ。たださ、いつもいつも認めてくれる人を見つけるのは大変だよね。だったら自分で自分に“いいね!”押したらいいんじゃない?」と次郎さんがつぶやきました。次郎さんの言葉は必要以上に他者からの承認を求めない、最も簡単な“自己承認”の方法といえるでしょう。「先輩、面白いこと言いますね! それなら即リアクションできるし、確実に“いいね!”がつきますね」と、大笑いしながら答えるW君。元気が戻ったW君の様子を見て、次郎さんもホッと胸をなでおろしました。