2017年3月の健康便り —メンタル—

人はなぜ怒るのか

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 花子さんから誘われて、駅前のファーストフード店でお茶をしている次郎さん。「映画、何にしようか…」と思案中の2人の目の前で、「何度言ったら分かるの! お母さんから離れちゃダメだって言ったでしょ!」と、若い母親が幼稚園くらいの男の子をどなりつけていました。
 どうやら、迷子になった息子を必死に探していたようです。怒られた男の子も大声で泣き出してしまいました。

花子

「お母さん、あの子がいなくなって、すごく心配だったんだろうね。子どもが急にいなくなったら、誘拐?事故?って、悪いことばかり考えて怖くなるよね」

次郎
「心配していたのに、どうしてお母さんは怒ったんだろう?」
花子

「そうよね、“心配したんだよ、見つかってよかった”って言えばいいのに、なんで怒っちゃうのかな、お母さんって。私も子どもの頃、そうやってよく怒られたわ」

次郎

「僕も!なんで怒られたのか分からないから、何度も同じことしたよね(笑)」

 さて、2人の経験を通して“怒り”について考えてみましょう。怒りという感情は心理学では、「二次感情」に分類されます。その感情の奥には、ネガティブな「一次感情」(心配、不安、寂しさ、つらさ、悲しさ、期待はずれ、絶望等)があり、一次感情はその人の「本当の気持ち」です。水面から突き出した氷山を思い浮かべてみてください。水面より上が二次感情である怒り、水面より下にあるのが様々な一次感情なのです。

 花子さんが言ったように、子どもを見失った時、若い母親の一次感情は「不安」や「心配」だったのでしょう。しかし、子どもの顔を見た途端、一次感情よりも二次感情である怒りの言葉を投げつけてしまいました。なぜなら人は一次感情が強くなればなるほど、怒りへの導火線も短くなってしまうのです。
 しかし、いきなり怒りの感情を向けられても、子どもにはなぜ自分が怒られたのか分かりません。氷山の見えている部分の怒りは伝わってきても、水面下にある母親の本当の気持ちは見えないので、次郎さんのように同じ行動を繰り返してしまうのです。
そうさせないためには、一次感情を「心配したんだよ、見つかってよかった」と言語化して伝えることが必要です。

 もし、皆さんの心の中に怒りの感情が湧きあがったら、その二次感情に突き動かされた言葉を投げつける前に、一呼吸おいて自分の一次感情に目を向けてみませんか。
 例えば、待ち合わせに遅れた友達に「遅いよ!」と怒るのではなく、「何かあったんじゃないかって、心配したよ」と、怒りの言葉では伝わらない本当の気持ちを率直に伝えることで、無用な対立を避けることができるかもしれませんよ。