2017年8月の健康便り —メンタル—

夏のひきこもり

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 次郎さんは幼なじみの宮本君のことで気がかりなことがあります。宮本君は地元の大学に進学しましたが、東京での就職を希望しています。とても真面目な性格で、何社もの企業研究を熱心にしており、次郎さんも感心するほど頑張っていました。上京するたびに必ず次郎さんに連絡してきた宮本君でしたが、先月、第一希望の企業のインターンシップに参加していたはずなのに、何の連絡もありませんでした。次郎さんが何度メールや電話をしても全く返事がありません。

 夏休みに入って帰省した次郎さんは宮本君の家を訪ねてみました。「何度も連絡くれたのに、返信しなくてごめん…」と暗い表情で、げっそりした宮本君が出てきました。次郎さんが心配していたことを告げると、宮本君は「自分なりに就活の準備には自信あったけど、他の参加者の話を聞いたらインターンシップの予定はびっしりだし、すでに何十社も企業訪問もしているし、僕なんか全然ダメだって思い知らされた。会社の担当者にも準備不足を指摘されたしね。何だか一気に疲れちゃったよ」とインターンシップでの辛い経験を話してくれました。

 こんな自分じゃ、東京で就職するなんて絶対無理だ…とショックを受けた宮本君。気を紛らわすためにひたすらゲームをしたり、漫画を読んだり、家でゴロゴロする毎日を送るようになってしまったのです。「これじゃ、引きこもりだよね」と力なく笑う宮本君を見て、次郎さんも困ってしまいました。

 大学生の夏休みの過ごし方として、自動車運転免許の取得、アルバイト、サークル活動、旅行など、“楽しくて活動的なこと”を想像しがちですが、「家でゴロゴロ」してしまう学生も案外多いと言われています。また、就活を控えた学年になると、宮本君のように“挫折感”や“疲労”から、やる気を失い、生活リズムを崩してしまうこともあります。2か月以上もある長い夏休みですから、漫然と日々を過ごしてしまうと、元のペースに戻すのもひと苦労です。そんな時は身近な人と約束をして出かけたり、簡単に達成できる予定を立てたりして、「行動」を起こしてみましょう。

 「河合先輩を誘って飲みに行かない? OB訪問とかじゃなくて、ちょっと就活の相談にのってもらおうよ!」と次郎さんは宮本君に言いました。気心の知れた高校時代の先輩と会う約束をすることで、宮本君を外に連れ出そうという作戦です。実は次郎さんも夏休み前に少し飛ばしすぎた就活の疲れを感じていました。「せっかくの夏休みだし、少しは楽しもうよ。就活はまだまだ続くんだからさ!」と言う次郎さんの言葉に、素直にうなずく宮本君でした。