2017年9月の健康便り —健康—

すり傷に消毒って必要?

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 短期留学や消防署での普通救命講習など、とても充実した夏休みを送った花子さん。学校が始まり、次郎さんと一緒に校内を歩いていました。すると、次郎さんの友人、美咲さんとばったり。嬉しそうに美咲さんと話す次郎さんを見て花子さんは落ち着きません。おしゃべりしながら一緒に歩いていると、次郎さんが何かにつまずいて転んでしまいました。ハーフパンツから出ていた膝がすりむけてかなり血がでています。「消毒しなきゃ!」とあわてる花子さんに、美咲さんは「水道でよく洗い流せば大丈夫」と落ち着いた様子。本当にそれだけでいいの?

 花子さんが子どもの頃は、転んですり傷をつくると、お母さんが消毒薬で消毒をしてガーゼや絆創膏をあててくれました。しかし近年では、傷を消毒しない、乾かさない「湿潤療法」という治療方法が注目されています。

<なぜ消毒しないの?>
傷を消毒すると雑菌を殺すだけでなく、傷表面の皮膚の形成を助ける細胞まで殺してしまい、その結果、傷の治りが悪くなる、傷を悪化させることがあると考えられています。少々の雑菌では化膿しないことがほとんど。まずは汚れた傷を水道水できれいに洗い流し、汚れや雑菌を減らすことが大切です。
<ガーゼで覆うのもダメ?>
 ケガをすると傷から血液や傷を治す体液が出ます。ガーゼをあてると血液と共にこの体液も吸い取ってしまい、傷の修復が遅れます。また、乾くと傷にガーゼが張り付き、交換するときに治りかけた傷をさらに痛めてしまいます。傷を早く、きれいに治すためには、傷が乾かないような素材で保護することが大切だといわれています。
<具体的にはどうしたらいいの?>
 ケガをしたら傷口をよく洗い流し、傷が乾かないような素材でできた湿潤療法用の絆創膏などで傷を覆いましょう。交換するときは静かにはがし、流水でそっと洗ってください。

 湿潤療法はすべてのケガに対応できるわけではありません。また、正しい方法で行わなければ感染を引き起こしてしまう場合もあります。湿潤療法用絆創膏の使用説明書をよく読み、自分で手当てをしても痛みや腫れがひかない、化膿した場合は必ず医療機関を受診しましょう。

 美咲さんは次郎さんを連れて近くの水道まで行き、流水で傷口を洗い流しました。傷口をこすらないように水分を拭き取とると、きれいなハンカチで傷を覆いました。「とりあえずこれでよし。絆創膏は持ってないから、保健室行こう」と優しく声をかける美咲さん。次郎さんの顔は真っ赤です。花子さんの頭の中は真っ白。どうする花子さん!