2017年10月の健康便り —メンタル—

何のために働くのか

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 「よう、次郎。元気か。俺、A出版から内定もらったよ」
次郎さんに声をかけてきたのは、漫画研究会の先輩の竹内さんです。大手出版社に就職が決まった竹内さんに話を聞こうと多くの後輩が集まっていました。最近は少しずつ就職先が決まった先輩が部室に来るようになり、卒業旅行の計画などを練っています。
「A出版か、すごい大手だな。羨ましいな」
そんなことを考えながら次郎さんが学食に行くと、先輩の本田さんが一人で昼食を食べていました。スーツ姿で、まだ就職活動は続けているようですが、表情は明るく見えます。
「お久しぶりです。元気そうですね。どうですか、就活」次郎さんが声をかけると、本田さんはこんな話をしてくれました。

 「久しぶりだね。見てわかるかもしれないけど、まだ就職活動中で、内定はもらえてないんだ。いろんな会社を受けてみたけど、どこもダメでさ。実は昨日までの一週間、就職活動を休んで、ぼーっとしに旅行に行ってたんだ」
「なるほど、大変だったんですね」
「あ、でもそんなに悲観してるわけじゃないよ。旅行中、本当は何がしたいだろうって考えたんだ。次郎は去年の夏に、キャンプをしたのを覚えてる? みんなでBBQして、ご飯を炊いて。俺、両親が忙しくて、子どもの時から食事は一人でさ。あぁやって、みんなで作って食べたご飯が楽しくて、最高においしかったんだ。だから、あの時みたいな温かい食卓作りに関わるような仕事をしたいって考えるようになったんだ」
「あ、覚えてます。僕も楽しかったです」
「俺も今までは大手に就職しなきゃとか、有名な会社に就職しなきゃって考えてたけど、温かい食卓作りに関わりたいって考えるようになってから就職活動に軸みたいなものができて、就職することを前向きに考えられるようになったんだ。だから、今は会社の大小ではなくて、どうしたら温かい食卓作りに関わることができるだろうって目線で就職活動をしてるんだ。まだ少し早い気がするかもしれないけど、次郎もいつかは仕事するんだし、考えてみるといいよ。自分のやりたいことが見つかると、不安もなくなるよ」
話を聞いて、本田さんが明るく見えた理由がわかりました。

 「どこに就職するかじゃなくて、何を仕事にするかが大切なのか。確かに、誰かにほめられるために働くんじゃなくて、自分が楽しく前向きに働きながら、成長したり社会に貢献したりするっていうことが働くっていうことだもんな。改めて考えてみると僕は何を仕事にしたいんだろう」
将来の仕事について、考え始めた次郎さんでした。