2018年8月の健康便り —メンタル—

ゲーム依存

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 就職活動も落ち着き、久しぶりにゼミに出席した次郎さん。再会した皆が元気そうで安心していましたが、福田さんの様子が見当たりません。福田さんは、次郎さんが学期末になるとレポートや試験勉強を手伝ってきた友人です。
 先生に聞くと、夏休み前から出欠連絡も無いままゼミを欠席していて、夏休みに入ってからも連絡の取れない状態が続いているのだそうです。次郎さんからも連絡をしてみましたが、返事はありません。そろそろ卒論の準備が心配になり、福田さんの住むアパートにやってきました。
 「急になんだよ、次郎、お前のせいで負けちまったじゃないか」
 何度もインターホンを押してやっと出てきた福田さんは、以前よりも痩せ、表情は暗く、ひげの手入れもしていない様子です。ゼミを欠席していることを聞いても「どうでもいいだろ、放っといてくれ」などと何だか投げやりになっています。話を聞くと、就職活動が思うようにいかず、挫折を経験し、パソコンゲームに熱中するようになったと言うのです。今もゲーム画面が開いたまま、いつでもプレイできる状態にしてあります。多い時は、40時間続けることもあり、ゲームと睡眠の間で、気が向いたときに食事をする生活を繰り返しているということでした。
 最近、ゲームの依存がニュースで取り上げられることも多いので、以前と様変わりした福田さんの様子を見て次郎さんも心配しています。

 世界保健機構(WHO)が発行する国際疾病分類(ICD)の最新版で、「ゲーム障害」が認定されました。ゲーム障害は「ゲームの実施時間をコントロールできず、生活に支障が出てもゲームを止めることができない」といった依存状態のことを指します。症状が深刻な場合は、ゲーム中に長時間同じ姿勢でいることで、運動不足やエコノミークラス症候群になるなど、身体面での影響が出る場合もあり、注意が必要な障害です。
 ゲーム障害も、その他の依存症と同様に専門家の治療を受けることができます。当事者は、自覚があってもゲームを止めることができないため、周囲のサポートが大切になります。周囲の人の様子で心当たりのある方は、保健所や医療機関、大学の学生相談所などに相談してみると良いでしょう。

 「これがゲーム障害ってことなのかな。確かに、何十時間も続ける自分が怖かったんだ」福田さんにも、思うところがあり、大学のカウンセラーに相談することにしたようです。
次郎さんは、福田さんの様子を見てホッとしながらも、福田さんが辛いときにサポートしてあげられなかったことを申し訳なく感じていました。福田さんの脱ゲーム依存をサポートしていこうと考える次郎さんでした。