2018年9月の健康便り —健康—

おしりの悩み、恥ずかしがらずに相談を

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 厳しい残暑の日差しに空を見上げると、イワシ雲が広がっています。花子さんは「はぁ…」と大きなため息をつきました。ここ数日便秘がちだったのですが、今朝やっとお通じがきたと思ったら肛門から出血があり、頭の中が真っ白になってしまいました。インターネットで検索すると大腸がんの可能性もあるって…。どうしよう。でも、おしりを診てもらうのは恥ずかしいし。悩みに悩んだ花子さんでしたが、血が止まってからも痛みが続いているので怖くなってきました。以前、子宮頸がん検診でお世話になった先生が相談しやすかったので相談に行くと、女医さんが診てくれる肛門科に紹介状を書いてくれました。受診の結果は「痔」と言われて、ホッと一安心。

 痔には大きく分けて「いぼ痔」「切れ痔」「痔ろう」の三種類があります。
 肛門の内側の血管がふくらんだタイプの「いぼ痔」は、痛みは少ないですが、排便時に出血したり、肛門の外にいぼが飛び出ることがあります。また、肛門の外に血豆のように血管がふくらむタイプの「いぼ痔」は痛みを感じますが、出血は比較的少ないようです。
 「切れ痔」はつよい痛みや出血があり、排便後もしばらく痛みが続くことがあります。
 「痔ろう」は肛門の内側からトンネル状に肛門周囲の皮膚まで貫通した状態です。肛門周囲の皮膚がはれて痛くなり、熱が出たり、膿が出て下着が汚れることがあります。
 治療法は痔の種類と程度により異なり、薬物療法と手術があります。出血が、がんなどの病気によるものではないか確認するためにも、症状が続く場合は病院で診てもらいましょう。

 診察の後、先生から生活の様子について聞かれました。花子さんは最近、卒論や就活に忙しく、朝ぎりぎりまで寝ていて食事がとれず、トイレも我慢してあわてて家を出ていました。外出先ではジャンクフードで空腹を紛らわせたことも…。
 「痔は生活習慣にも原因があるのですよ」と、先生はやさしく教えてくれました。「痔の改善のためにも予防のためにも、まず便秘を治しましょう。便意があったときに我慢せずトイレに行くこと。長時間の座りっぱなしや立ちっぱなしを避け、適度に体を動かすと腸の動きが活発になります。冷房で体が冷えると肛門の周りの血流が悪くなるので、お風呂では湯船につかって体の血行を良くするとともに、肛門の周囲は清潔に。トイレの温水洗浄は肛門への刺激になるので、水圧は強くしないこと。また、ストレスは免疫力が下がり、痔が悪化しやすくなるので、何かリラックスできる趣味があるといいですね」
 花子さんが、友達にフラダンス体験に誘われていることを話すと、先生は出かけてみることを勧めてくれました。乳酸菌や食物繊維の多い食品をとったり、起き抜けに冷たい水や牛乳をコップ1杯飲んだりすると腸が刺激されて便秘の改善になるそうです。アルコールや香辛料などの刺激物、たばこは痔の悪化の原因になるとのこと。

 生活習慣ってバカにできないな。反省した花子さんは、病院の帰りに本屋さんで食物繊維たっぷりメニューのレシピ本を手に取りました。パラパラとページをめくっていたら、将来、誰かのために料理を作る自分の姿を思い浮かべてちょっぴりにやけてしまいました。