2018年12月の健康便り —メンタル—

これって、アカハラ?

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 卒論もいよいよ追い込みの時期になりました。次郎さんは毎日のように担当指導官の中野教授に書き直しを命じられています。「はぁー、いつになったら完成するんだろう」と暗い気持ちで研究室を後にすると、井上君がやってきて、怒りながら次郎さんに言いました。「中野教授って、細かいだろ? 重箱の隅をつつくみたいに、しつこくダメ出しするしさ。何度書き直しても、“意味が分からない"って言うだけ。それって嫌がらせじゃない? 学生を脅したり非難したりするのってアカハラだよ!」

 アカハラとは、アカデミックハラスメント(和製英語:academic harassment)の略語で、大学や大学院などで教職員や学生間において、「教育・研究上の地位や優位性に基づき、相手の人格や尊厳を侵害する言動を行うことにより、その人や周囲の人に身体的・精神的な苦痛を与え、その就学・研究環境を悪化させる」ことをいいます。教員から学生に対して、またはベテランで権限を持つ教員から任期制助教、助手等の若手の教員に対してが多いのですが、他にも職員が教員に対して、研究の妨害をする例も見られます。

 井上君は教授の「卒論指導」をアカハラだと怒っていましたが、次郎さんはそこまでひどい嫌がらせをされたとは感じていません。何度も書き直すのは大変ですが、教授の指導やアドバイスは納得できるものだったのです。「アカハラは大げさじゃない? そこまでひどくないと思うよ」と次郎さんが答えると、「えこひいきされている奴には分からないよ。俺なんか、卒論が出せなくて留年決定だ! 教授のせいで内定も取り消しだよ!」と悔しさのあまり、決定もしてないことを言い出す井上君。取り乱す井上君を落ち着かせ、ゆっくり話を聴くと、以前から教授との関係に悩みを抱えて、ずっと我慢していたようでした。

 アカハラに限らず、ハラスメント(いじめや嫌がらせ等)を受けたと感じた場合、その心の痛みや傷つきは本人(被害者)にしか分からないものです。周りの人には些細なことであっても、被害者にとっては簡単には忘れられないほど、心理的にも生活環境にも悪影響を及ぼしてしまうものなのです。このままだと井上君と教授の関係はますます悪くなって、本当に卒論指導をしてもらえなくなるかもしれないと次郎さんは心配になりました。そこで「教授とうまくコミュニケーションできないことを、研究室の佐々木さんに相談してみたらどうかな? 佐々木さんは長いこと教授の助手として近くにいる人だから、教授の性格とか、考え方とかよく知っていると思うよ」と次郎さんは井上君に提案しました。

 自分がハラスメントを受けていることを、周りの信頼できる人に「相談する」のはとても大切なことです。思い込みや先入観で相手の行動を「ハラスメント」と決めつけず、客観的な意見を聞いてみるのも必要です。

 その後、次郎さんと井上君は佐々木さんから中野教授の“攻略法"を伝授され、卒論完成へ向けて大奮闘しています。

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