2019年6月の健康便り —メンタル—

将来への不安

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 「友達はみんな頑張って就活しているのに、自分だけ取り残されているようで怖いです。インターンシップのエントリーをしても、本当にこの会社でいいのかな?って考えてしまうと、申し込んだり取り消したりの繰り返しです。人生の分かれ道なのに、何がやりたいのか全然、分からないんです」
 深刻な表情で話しているのは、3年生の福田君です。「人生の分かれ道って思うほど大事なことなのに、やりたいことが分からないっていうのは怖いよね」と、就職活動がうまくいかず、すっかり自信をなくしている福田君に心理カウンセラーのキムラさんが言いました。

 「エントリーする会社を決める時、福田君はどんなことポイントにしているの?」とキムラさんが質問すると、少し考えてから、ぽつりぽつりと「ホームページのセンスがいいとか、家から近いとか、情報サイトのクチコミが高得点とかですかね。業界的には食品や飲料メーカですね」と答える福田君。“ちゃんと自分の基準をもっている”とキムラさんは思いました。しかし、福田君はこんなことで、自分の将来を決めてはいけないと思い込んでいるのです。もっと考えて、ちゃんと見極めて、自分に合った仕事に就きたいと真剣に悩んでいる福田君の辛さは、キムラさんにも伝わってきました。

 就職活動は大学生にとって、これから先の長い社会人生活に入る最初の1歩です。ここで間違った選択をしてしまったら、取り返しがつかないと恐れる気持ちは誰にでもあるでしょう。だからこそ、会社説明会に行って情報を集め、インターンシップに参加して社内の様子を肌で感じようと努力しているのです。福田君は「何も分からない」わけではなく、自分の基準でやるべきことをやっているのに、それに気づいていないのです。

 「福田君のポイントにしていることは、とても重要なことだと思います。ホームページはその企業のカラーが出るし、通勤時間が短いのは体に負担がかからないから、大きなメリットです。目指す業界もはっきりしている。今、自分ができることはちゃんとやっていると思うよ」と、キムラさんは福田君の「できていること」を認めるような言葉をかけました。「そうなのかなぁ、自分じゃ全然ダメだと思っていたけど。でも僕、ゴールデンウィークに帰省した時、地元で開催していた合同企業説明会にも参加したんです」と福田君は照れながら話してくれました。「地元でも就活していたんだね。福田君、頑張っているじゃない。そういう地道な努力をしている自分に、もう少し自信をもってもいいと思うよ」

 目に見える大きな成果が出ていなくても、生活の中で積み重ねた小さな努力を、まずは自分自身で認めていく、そうすることで自己肯定感が高まります。キムラさんの励ましは、落ち込んでいた福田君を勇気づけたようです。「インターンシップが終わったら、また報告にきます」と言って福田君は相談室を後にしました。