2019年11月の健康便り —健康—

突然の胸の痛みと呼吸困難

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 街路樹が色づく11月のある日、先日の学園祭でミスキャンパスに選ばれた愛子さんが健康管理センターにやってきました。「モモセさん、今日オープンキャンパスの来場者に大学生活について話をするのだけど、一緒に講演する正樹さんの具合が悪くなってしまったの。顔色がすごく悪くて。すぐに来てくれませんか」

 オープンキャンパスのお手伝いに参加した学生の控室へ急いで向かうと、正樹さんが胸から鎖骨のあたりをさすりながら、「急に胸の痛みが起こり、息が苦しくなった」と話しました。ミスターキャンパスに選ばれた細身で長身の正樹さんに、モモセさんはうなずきました。
 「愛子さん、正樹さんは今すぐに受診が必要だと思う。今日の講演は愛子さん一人でも大丈夫?」愛子さんは力強くうなずきました。近くにいた大学の担当職員が「すぐに病院へ連れて行く手配をします」と言って出ていきました。
 「正樹さん、病院で検査をしないとはっきりとは分からないけれども、たぶん気胸を起こしているんじゃないかと思う。呼吸器の病気だけれど、治療を受ければ治る病気よ」不安そうな表情を浮かべていた正樹さんも、集まった学生も少しだけ安心したようでした。

 「気胸」は肺が破れて、肺を包んでいる胸膜という場所に肺から漏れた空気が溜まってしまい、溜まった空気に押されて肺がしぼむことで体の中に酸素を取り込むことができなくなる病気です。肺炎や胸部の打撲などで発症することもありますが、原因不明で突然発症することも多く、その場合を「自然気胸」と呼んでいます。
 自然気胸は一般的に、背が高いやせ型の10〜30歳代男性に多く、発症のリスクとしてタバコ、運動、姿勢の悪さ、気圧の変化などが考えられています。また、受験や就職などのタイミングで発症することもあるため、ストレスや睡眠不足なども要因のひとつと言われています。
 症状は、息が吸えないなどの呼吸困難、顔色や唇の色が悪くなるチアノーゼ、心臓がドキドキして脈が速くなる動悸や頻脈の他、咳、胸の痛み、肩や鎖骨の違和感があります。

 病院では医師が聴診器で呼吸音を聴き、気胸が疑われると胸のレントゲン検査やCT検査で確認します。一般的には呼吸器科で専門の治療を行います。胸の痛みや呼吸困難は心臓の病気でもみられる症状なので何科を受診したらよいか迷う時には、総合病院がよいでしょう。また、強い痛みや息苦しさを感じたら無理をせず、救急車を呼んでください。

 大学職員に付き添われて病院へ向かう正樹さんを見送りながら、モモセさんは、今日オープンキャンパスに集まった未来の学生達にも気軽に相談に来てもらえる健康管理センターでありたいと思いました。