2020年5月の健康便り —メンタル—

ひとりで悩む前に、まずは相談してみよう

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 5月に入り、心地よい風が吹く季節になりました。朝一番に相談室にやってきたのは、1年生の片岡雅弘さんです。思いつめたような表情の片岡さんは席に着くと「サークルのことで悩んでいて…」と話し始めました。

 キャンパス内で片岡さんに、波野さんという女性が声をかけてきました。聞けば、波野さんは2年前に大学を卒業した社会人で、現在もサークル活動に参加しているとのこと。明るくハキハキと話す、感じのいい人でした。波野さんから「5分程度のアンケートに協力してほしい」と頼まれた片岡さんは「5分なら」と、あまり深く考えずに承諾しました。

 アンケートの回答が終わると、波野さんが入っているサークルは、ボランティア活動を行うことで自己実現を目指す、というものだと説明してくれました。「意識の高い仲間と交流できて視野が広がるし、対人スキルを磨くこともできるよ。私も学生の頃はあがり症で、人とうまく話せなかったけれど、サークルのおかげで人と話すことが怖くなくなったの。おかげで就活もすごく順調だった。片岡さんも将来のために、入っておいた方がいいよ」と、サークルへの入部を勧めてきました。

 片岡さんは落ち込んだような口調で続けます。「その日は入部を決めずに帰りました。波野さんと別れてからそのサークルをインターネットで検索してみたら、以前、反社会的な事件を起こしていたんです。このままサークルに入ったら、犯罪に巻き込まれるんじゃないかと思うと、不安で仕方ないです。でも、波野さんはいい人だから、断りにくくて困っています。どうしたら良いでしょうか」

 キムラさんは、どのような方法であれば断ることができるか、具体的に考えてみることにしました。「例えばメールだったら、直接会って話すよりは断りやすいんじゃないかな?」と聞くと、片岡さんは「そうですね。でも、どんな言葉で断ったらいいんだろう。下手なことを書いたら相手に恨まれたりしないかなぁ。住所や電話番号なんて、教えなければ良かった…」と今にも泣き出しそうでした。そこでキムラさんは「誰か助けてくれるような人はいないかしら? ご両親とか、研究室の教授とか。学生課なら学生のいろいろなトラブルに対応しているだろうから、片岡さんの話も聞いてくれるかもしれないよ」と提案しました。「そうですね、何でも話を聞いてくれる友人がいるので、まずはその子に、どんな断り方がいいかを相談してみようかな。あと、母親にも一応、話してみます」と、少し明るい口調で話しました。

 自分ひとりでは解決できないような問題や悩みを抱えた時は、恥ずかしがらず身近な人に“相談”してみましょう。今の状況を人に話すことで、自分の考えや気持ちが整理できたり、良い情報を得られたりするかもしれません。片岡さんはキムラさんに相談したことで、断り方や相談できそうな人を見つけることができました。他人に助けを求めたり、頼ったりするのは決して悪いことではありません。まずは、相談する勇気をもつこと! これが大切です。