2020年7月の健康便り —メンタル—
緊急事態宣言が解除され、大学の構内に学生の姿が少しずつ戻ってきました。健康管理センターの相談室でも、対面カウンセリングが再開されましたが、引き続き電話やメールでの相談も受け付けています。
ある日、1通のメール相談が入りました。内容は「つらい」の一言だけ。相談者は3月に一度対面カウンセリングをした中村美幸さんでした。「今電話でお話しできますか?」と相談室の電話番号を添え、すぐに返信するキムラさん。すると、中村さんから電話がかかってきました。
「中村です…」と言ったきり、言葉が続きません。「中村さん、メールありがとう。何かあったかな?」とキムラさんは優しく声をかけます。「えっと…。最近、誰とも話していません。2年生になって1回だけ大学に行ったけど友達と会えませんでした。コロナの影響で前期の授業は全部オンラインだし、バイトもないし」と絞り出すような小さな声で状況を話してくれました。「話してくれてありがとう。中村さんは一人暮らしよね。学校もバイトもないとなると、一人で過ごす時間が長いのかしら?」とキムラさん。中村さんの実家は岩手県です。両親、祖父母への新型コロナウイルス感染を懸念し、実家に帰れない状況が続いていました。友人とも会えない毎日。国からの外出自粛要請が出始めてから、ずっと一人で過ごし、孤独感を強めていたようです。
「最初は外出せず、料理したり、家でYouTubeを見たりして過ごしていました。でもここ最近、ニュースやツイッターを見ていたら、気が滅入る言葉ばかりが入ってきて…」
当初はこの状況に立ち向かおうと頑張っていたものの、その気力も尽きてきたようです。さらにニュースなどからのネガティブな情報にさらされ、不安が強まったのだとキムラさんは考えました。「夏休みも実家に帰れないかな。このまま後期も授業はオンラインだけになっちゃうのかな。友達にも会えないのかな。就職活動できるのかな」と、堰を切ったように将来の不安を語る中村さん。
先が見えない状況が続いている昨今、不安を感じるのは当然です。このようなときに、一人で抱え込むのは良くありません。「時には友人と話し、両親とも連絡をとってくださいね。意識的に人と関わる時間を作ることも必要かも」とキムラさんは伝えました。
また、新型コロナ関連のニュースで不安を感じたところに、SNSのコメントが拍車をかけることがあります。情報を見ない時間を作ることも大切です。「なんだか漠然と不安で…。答えをSNSに求める感じがあったかも。今日話したら頭の中や気持ちが整理できて、少し落ち着きました」と、誰かと話すことの重要性に中村さんは気付いたようです。「今やれることを一歩一歩やろうかな。実家の両親にも電話してみます」と少し明るい声になりました。
最後にキムラさんは、「対面カウンセリングもできるようになったから、予約を入れましょうか?」と聞きました。孤独になりがちな環境の中、学生が孤独を乗り越えられるような工夫をしていかなければいけないと痛感したのでした。