2020年9月の健康便り —メンタル—

もしかしてゲーム依存症?

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 「今日はもうこれで終わりかな」とつぶやきながら、相談室の片づけをしようと立ち上がったキムラさん。そんな時に電話が鳴りました。「あの…僕、ゲーム依存かもしれなくて、そういう相談もできますか?」小さな声で話すのは4年生の山崎春樹さんでした。キムラさんは「相談は17時までだから15分間くらいなら、このままお話を聞けますよ」と促しました。

 山崎さんは実家で両親と住んでいます。両親は仕事をしており、日中は家に一人でいることが多いようです。4月頃から新型コロナウィルス感染症拡大の影響で就職活動が思ったように進まず、その不安や焦りを振り払うように、この数カ月、ずっとスマホのゲームをやってしまっていると打ち明けてくれました。キムラさんは山崎さんのけだるそうな声を聴いて気づきました。「もしかして、今、寝起きですか?」山崎さんは恥ずかしそうに「夜はずっとゲームをやり続けてしまって、気が付いたら朝です。親に知られたら怒られるので、朝ご飯を食べて、親が仕事に出かけてから夕方まで寝ています」と答えました。どうやら昼夜逆転の生活になっているようです。
 「実は…、ここ何日か、ゲームで結構課金してしまって。今月は、親に言えないくらいの金額を使ってしまいました。ゲームをしていると就活がうまくいかないことも忘れられるし、お金のこともどうでもよくなっちゃって。来月の請求が大変です。貯金があるので、今回はそれで何とか払おうと思うけど、こんなこと続けていたら親にばれてしまいます。どうしよう。もうゲーム依存症ですよね、これって」と声を震わせました。

 キムラさんは山崎さんが落ち着くのを待って話し始めました。「打ち明けてくれてありがとう。自分のことを自分でコントロールできなくなってしまうのは不安だよね」
 ゲーム依存症は、医療の世界では「ゲーム障害」とも呼ばれています。具体的な症状は、①ゲームをする時間や頻度、環境などのコントロールができない、②他の生活上の関心事や日常の活動よりゲームを続ける、③ゲームによって問題が起きているにもかかわらずゲームを続け、学業や仕事、家事などの日常生活に著しい支障がある、です。これら3つが全て当てはまり、この状況が12カ月以上続く場合、「ゲーム障害」と診断されます。山崎さんがゲーム漬けの生活になってから5~6カ月ほどですが、このまま続くようでは今後が心配です。

 「今日の相談時間はもう終わりだから、続きは明日にしませんか? これからどうしていけばいいか、一緒に考えていきましょう。朝ご飯を食べた後、また寝てしまう前に電話できますか? 9時はどうでしょうか」山崎さんにとってプレッシャーにならないよう、無理のない時間を提案してみました。「それくらいの時間なら大丈夫そうです」山崎さんは答えてくれました。ゲーム障害かどうかのポイントとして、予定通りに行動できるかが重要です。明日、ちゃんと電話してくれるといいな。キムラさんはそう願いながら受話器を置きました。