2020年11月の健康便り —メンタル—

友達づくりのスタートは

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 今日は、数日前から面談予約を入れていた2年生、村山由衣さんの面談日です。「すみません」と小さな声で健康管理センターの相談室に入ってきた村山さん。カウンセラーのキムラさんとの面談が始まりましたが、うまく言葉が出てきません。目もあまり合わせたくない様子です。

 ようやく「えっと…。私、友達がうまく作れないんです。大学に入ってから、一人も友人がいなくて。サークルに入ったけど、プライベートで遊べるほどの仲の良い人がいないんです」と悩みを打ち明けてくれました。「友達が作れないのは何か原因があるのかな?」とキムラさん。「人と話すのが怖いんです。自分が話したことを、相手がどう感じているのか気になって。こんなこと言って、嫌われないかなって…」と言う彼女の心の内が見えてきました。

 キムラさんは、村山さんの中に「傷つきたくない」という強い思いがあるのではないかと感じました。そのような感情を強く持っていれば、コミュニケーションを取るのが怖くなるのも当然です。「例えば、話してみたいと思う人がいるとして、村山さんはその人とどのような人間関係を築きたい?」とキムラさんが聞くと、「うーん。普通に挨拶して、昨日あった出来事を話すとか。たわいもない会話ですかね」と答えてくれました。

 コミュニケーションは言葉のキャッチボールです。こちらが言葉を投げれば、それを受け取った相手から、言葉が返ってくる。この繰り返しで、相手のことを徐々に理解していくのです。つまり、自分の意志を言葉で表現することからコミュニケーションは始まります。
 「今まで相手が話してくれるのを待っていました。自分から話しかける勇気がなくて。でも、それじゃ何も始まらないですよね」と村山さんは何かに気づいたようです。「まずはハードルの低いコミュニケーションとして、挨拶から始めてみたらいいんじゃないかな」とキムラさんがアドバイスしました。「そうですね。挨拶なら誰とでもできそうです。ちょうど来月からアルバイトを始めるんです。どう思われるかではなくて、相手とどういう人間関係を築きたいのかってことか…。意識してみます」と村山さんから前向きな言葉が出てきました。

 相手に自分の気持ちを言葉で伝えるのは、思ったほど簡単なことでありません。しかし、言葉で伝えなければ、自分のことをわかってもらえません。うまくいかなかったな、と感じた時は、どのような言葉かけが良かったのかと振り返るのも、コミュニケーションの訓練になります。「村山さんなりのコミュニケーションを実践しながら、振り返る。これを繰り返してみましょうよ」とキムラさん。「ありがとうございました!」としっかりした声で相談室を去っていく村山さんでした。