2021年4月の健康便り —メンタル—
「不安なことを書き出してみたら、こんなにありました」と、スマートフォンの画面を差し出した3年生の大森敦志さん。就職活動、公務員試験の勉強、ゼミの発表準備、コロナの感染予防、彼女の誕生日、先輩に紹介されたアルバイトが嫌だ、筋トレができない、クリーニング屋にスーツを取りに行く…など、20項目以上ありました。
心理カウンセラーのキムラさんは健康管理センターの相談室で、日々、学生たちの悩みに耳を傾けています。新学期が始まった4月は大森さんのように、「不安」を訴える相談が最も多くなる時期です。1年生は初めてのキャンパスライフに期待と不安を抱え、進級した学生にもそれぞれの心配や悩み事があります。ましてや、昨年からの新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、社会全体も先行きが不透明な状況です。不安になるのも当然のことでしょう。
「こうやって書き出してみるのは、不安な気持ちを整理するうえでとても良い方法だと思いますよ。改めて見直してみて、何か気づいたことってありますか?」キムラさんが質問すると、「なんかくだらないことが多いな、と思いますけど、でも、どれもやらなきゃいけないことみたいな気がします」と大森さんが答えました。
人は誰でも多少の不安を抱えながら生活しています。不安が全くない、ということはありません。不安な気持ちがあると、慎重に行動しようと考えますし、危険なことを避ける準備や予防ができます。不安は自分が安全に生活するために必要なセンサーでもあるのです。ただし、このセンサーが強すぎると、逆に自分自身を傷つけてしまうことがあります。不安を抱えた時には大森さんのように書き出したり、人に話したりすると、不安を感じている事柄や状況を客観的にみることができます。その事柄や状況に重要度や優先順位をつけると、なにから手を付けていけば良いか分かりやすくなります。
「不安をすっかりなくすことは難しいから、ひとつずつ片付けていく、と考えてみると少し楽になると思いますよ。例えば、ここに書いてある中で、今日中にできることってどれかな?」「うーん…、クリーニング屋にスーツを取りに行くことですね」「じゃ、それをすればひとつ不安が消えるよね。じゃ、次はどれが片付けやすいかな?」と2人で、片付けやすい優先順位をつけていきました。
自分一人ではどうしようもできないと感じた不安も、誰かに相談することによって解決しやすくなるかもしれません。「また何か不安なことがあったら、遠慮せずに相談に来てね」と言いながら、大森さんを見送るキムラさんでした。