2021年5月の健康便り —健康—

舌下療法で花粉症予防

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 大学4年生の前田涼太さんは車の運転が大好きです。花粉症のため、毎年、症状が出る時期には医療機関を受診して処方薬をもらっていますが、薬を飲むと眠くなるので運転を控えています。最近やっと花粉の飛散が落ち着き、ドライブを再開することができました。でも、友人たちには「3月中も自粛の気晴らしにドライブしたかったんだ。でもやっぱり、薬を飲むと眠くてだめだった」とSNSでつぶやきました。「営業職希望だから車の運転が必要になるかもしれないのに、運転できない時期があるなんて…。就職も心配だよ」そのつぶやきを読んだ中園達也さんは、以前かかりつけ医に勧められた花粉症の舌下療法について思い出しました。

 花粉症治療のひとつにアレルゲン免疫療法があります。これはアレルゲンを少量から投与し、徐々に体を慣らしていく方法です。今までは注射で行われていたため医療機関でないと治療ができませんでした。しかし近年、薬を舌下に置き一定時間口の中で保持して飲み込む、舌下免疫療法が登場しました。そのため自宅でも治療が可能になりました。治療を始める時期として最適なのは花粉が飛んでいない時期です。花粉が飛んでいる時期はアレルゲンに対する体の反応性が過敏になっているからです。治療を始めて数ヶ月後から効果が期待されるため、スギ花粉症の場合、花粉が落ち着いた5月頃に治療を開始するのが一般的です。長期的にしっかり治療を行うことでアレルギー症状が軽減・治癒することが期待できます。舌下療法の副作用は、口内炎など口の中の炎症、唇の腫れ、喉のかゆみや不快感、耳のかゆみ、頭痛などです。稀にアナフィラキシーを起こす可能性があるため、最初の投与は医療機関で行います。舌下療法の対象者はスギ花粉症などに確定診断された方で、他のアレルギーがある、気管支喘息があるときなどは治療の対象外となることもあります。興味のある方はかかりつけ医へ相談してみるとよいでしょう。

 中園さんに舌下療法というものがあるよ、と教えてもらった前田さん。健康管理センターの看護師モモセさんに、舌下療法について聞きに行きました。「舌下療法で効果がでると、いままで内服していた薬は必要なくなるかもね。舌下療法は眠くならないから車の運転をする人にはいい治療法だし、花粉の季節のさまざまな症状が軽減すれば、仕事も頑張れそうね」とモモセさんは伝えました。「もっと早く、舌下療法のことを聞いていればよかった。一度耳鼻科で相談してみようと思います」と笑顔で答えた前田さん。その報告をSNSで受けた中園さんは「毎年症状が辛そうだったから、治療が順調にすすむといいね。就活もお互い頑張ろうぜ!」と返信しました。