2021年5月の健康便り —メンタル—

自分の特性(発達障害)を理解する

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 今日の相談者1年生の小林芽衣さんは、子どもの頃に発達障害の診断を受けており、入学当初から学生課や健康管理センターの心理相談員キムラさんのサポートを受けています。コミュニケーションが苦手で、相手の感情や考えを理解することが難しく、自分の興味や関心のあることには強いこだわりを示すといった特徴があります。

 小林さんが疲れ切った表情で相談室にやってきました。「小林さん、少しは大学生活に慣れましたか?」キムラさんがたずねると、「全然だめです。先生に手伝ってもらって、やっと履修登録ができました。WEBだったからよく分からなくて…。教室もみんな同じように見えるし、授業の度にどこに行けばいいか分からなくなります」とため息をつきながら話してくれました。小中高校と一貫校だった彼女には、何かと面倒を見てくれる同級生がいたので、これまでの学校生活では特に困ったことはなかったそうです。ところが大学では、まだ親しい友達もいません。毎日、悩んだり困ったりすることが多く、エネルギーを消耗しているように見えました。

 彼女はコミュニケーションに苦手意識をもっているので、誰かに助けを求めることができません。「履修登録を手伝ってもらうなんて甘えている」と他の学生たちは思うかもしれませんが、発達障害の傾向を持つ人は努力を怠っているわけではありません。一生懸命取り組んでいても生まれつきの「特性」ゆえに生きづらさを感じている場合があります。そんな自分に自信が持てず自己嫌悪に陥ると、ますます孤立感が強くなってしまいます。

 キムラさんは、小林さんが発達障害という自分の「特性」を正しく理解し、受け入れることが大切だと考えました。「小林さんは好きなことや興味のあることは、すごく熱心に調べたり勉強したりするでしょ? そういう集中力の高さとか粘り強さとかも、発達障害の特性のひとつなのよ。それって長所でもあるし、個性でもあるんじゃないかな?」キムラさんは、彼女が感じているネガティブな特性を具体的にポジティブに言い換えていきました。
 「確かに大学の教室は似たような感じだから分かりにくいよね。次の面談までに、構内の見取り図を用意しておくから、曜日と時間割に合わせて、移動する教室マップを作ってみましょうよ」という提案に、小林さんも安心したようでした。

 「発達障害だから」ではなく「発達障害だからこそ」、その傾向や特性を本人も受け入れ、周りの人たちも知ることが重要です。小林さんのような学生が大学生活を楽しみながら送れるよう、キムラさんも大学としてどのような配慮ができるか、もっと考えてみようと決意しました。