2021年7月の健康便り —健康—

室内での熱中症を防ごう

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 大学4年生の長尾恵美子さんは卒論で大忙しです。同じ学生寮に住む友人の川畑美優さんと「就職前にコロナが落ち着いたらお出かけしようね」と約束し、毎日研究に熱中していました。昨夜遅くから早朝まで卒論の執筆をしていた長尾さん。突然めまいと吐き気に襲われ、とっさに川畑さんに連絡しました。川畑さんは部屋に来ると「なんでこんなに部屋が暑いの? 熱がこもっているよ」と、窓を開けて換気をし、すぐにイオン飲料を買ってきてくれました。

 熱中症は強い日差しのさす屋外で起こるイメージが強いですが、室内での熱中症は少なくありません。熱中症の発生場所として約4割は敷地内を含む住居で発生しており、室内での発生も多いという消防庁のデータもあります。
 直射日光の当たらない室内で、なぜ熱中症が起こるのでしょうか。熱中症は気温や湿度が高い場所に身体が適応できないことで生じます。温度と湿度が上昇する、風が通らない、冷房機器を使用していないという室内環境では、体に熱がこもりやすくなります。身体がその環境に適応できないと熱中症になるのです。体調不良、寝不足、疲労の蓄積、水分不足なども熱中症を引き起こす要因となります。室内では、エアコンや扇風機を使う、風通しを良くする、通気性の良い衣服を選ぶ、冷却グッズを使うなどして予防に努めましょう。十分な水分と適度な塩分補給も忘れずに。部屋の温度や湿度を確認する、こまめに休憩を取ることも大切です。
 熱中症には重症度があります。I度はめまい、こむらがえり、大量の発汗、手足のしびれなど、II度は頭痛、嘔吐、倦怠感など、III度は意識障害、けいれん、高体温、運動障害などです。I度の症状であれば、風通しの良い涼しい場所へ移動して体を冷やし、水分や塩分を摂取して休息をとりましょう。首の後ろ、わきの下、足の付け根などを冷やすと効果的です。それでも症状が続く場合やII度、III度の場合は早めに受診してください。

 後日、長尾さんはモモセさんのところに熱中症になったことを話しに行きました。モモセさんは「大変だったのね。梅雨や初夏の時期は体が暑さに慣れていないから特に熱中症になりやすいのよ。部屋の中でも気を付けてね」と伝えました。一緒に来た川畑さんが「長尾さんは集中すると周りが見えなくなるタイプ。部屋があんなに暑いのに気が付かないなんて驚いたよ」と言うと、長尾さんは恥ずかしそうに笑いました。そして、川畑さんやモモセさんに「体調が悪くなって初めて熱中症が怖いと思いました。スマホのアプリで温度や湿度が測れるので、今はこまめに確認しています」と熱中症予防に使えるアプリのことを教えてくれました。