2021年7月の健康便り —メンタル—

子どもが心配な親・子離れできない親

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 大学の健康管理センター相談室に電話をかけてきたのは2年生の山内孝子さんのお母さんでした。
 「こんなお話をするところではないかもしれないですけど…」と不安げな様子です。「お子さんの学校生活のことでしょうか、どのようなお話か聞かせていただけますか?」とキムラさんが伝えると、「2年生になって、コロナの心配はあるけれど対面授業が少しずつ始まるということで、娘はやっと大学に通えると喜んでいました。それが、最近またふさぎ込んでいて…、なんだか雰囲気になじめないと言うんです。どうしてあげればいいのかと思って」と言葉を詰まらせました。

 孝子さんは幼い頃から体が弱くて、引っ込み思案なタイプだったとか。お母さんが言うには、“自分で決められない子”だったので、これまで進路を考えたり、大学の見学にいったり、履修科目の選択も一緒にやってきたそうです。「反抗期なんでしょうか、娘はあまり話してくれなくなったんです。これまで娘のためにやってきたことが間違いだと言われているような気がして。過干渉とか…いうんですよね?」と思い詰めた様子で話しました。

 大学生ともなれば、それまでとは世界の広がり方が違います。しかもコロナ禍で誰も経験したことのない新入生としての1年間を過ごしてきた葛藤や心の負担を感じている新2年生は少なくないでしょう。孝子さんも対面授業の開始や新生活への期待が大きく膨らんだ分、友達作りに焦りを感じているのかもしれません。また、お母さんが娘との関わりを見直すべきだという気づきがあるならば、これは良い機会であるとキムラさんは思いました。

 キムラさんはお母さんに、孝子さんがリモートで受講していたこの一年間の様子について聞いてみました。すると、意欲的に資料を読んで計画的に課題をこなし、通学できないながらも授業の内容を楽しそうに話してくれていたそうです。「お母さんが孝子さんのやりたいことを汲み取りながら進路選びに協力してきたという証拠ですね。成長を感じていらっしゃるのではないでしょうか。孝子さんが自信をつけていけるよう話を聞いてあげながら、ただ、今までよりも少し距離をとって見守る、というようにかかわり方を変えていくのはどうでしょうか」と伝えました。
 お母さんは、「そうですね、少し遠くから見守るようにすることも必要ですよね。お話しして少し気持ちが整理できました」と、電話をしてきた最初と比べ、かなり落ち着いた声になっていました。