2021年08月の健康便り —メンタル—

憂うつな気分のときにできること

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 健康管理センターの相談室では、電話やメールでの相談も受け付けています。ある日、相談室の電話が鳴りました。カウンセラーのキムラさんが電話に出ると、「死にたい」と絞り出すような声で泣いている様子でした。キムラさんは「ゆっくりでいいですよ」と相手のペースで話を聞き始めました。

 少し落ち着いてくると彼女はぽつぽつと話し始めました。三井優さんは大学2年生。入学してからずっとオンライン授業です。両親は優さんが小学生の時に離婚。家庭の金銭状況もあり、浪人はできないと、第一志望ではない大学に入学しました。そのため大学では友達を作る気持ちになれませんでした。コロナ禍ということもあり、大学では友達がいません。授業の課題をグループで行う時も、連絡手段のグループLINEではクラスメイト同士は当然タメ口ですが、優さんに対してはみんなが丁寧語です。そんな状況を「クラスメイトに気をつかわせている私が悪い」と思ってしまうとのことです。

 家族について尋ねてみると、母親はシングルマザーで優さんと妹を育ててきました。妹には障害があり、母親は妹の世話で手一杯だったとのこと。優さんは幼い時から常に「母親に迷惑をかけてはいけない、姉なんだからしっかりしなきゃ」と思って生活してきて、「自分は生まれてこない方がよかったのではないか」と常に考えてしまう癖がついていると話してくれました。キムラさんは、率直な気持ちを話してくれたことに感謝し、優さんが大学でクラスメイトとの難しさを感じながら、勉強を一生懸命頑張っていること、家族の中で母親や妹を思いやり、たくさん我慢してきたことを伝えました。

 優さんは「自分は何もできていないと思っていたけど、できていることもあったんですね」と驚いた様子でした。さらに、何をしている時が一番リラックスできるかを尋ねると、「うさぎを飼っていて…、触っている時が落ち着きます。一生懸命野菜を食べている姿がかわいいです」と笑いながら答えました。
 キムラさんは、うさぎを触ったり、休んだり、散歩したり、優さんのペースでいいなと思うリラックス法を試してみるよう提案しました。優さんは力のある声で「やってみます」と言い、電話を切りました。

 私たちは時に「誰からも必要とされていない」「生きる意味がない」「死にたい」と感じてしまうことがあります。原因は一つではなく、いくつかの要因が重なっています。思いつめてしまったときは、その状況から一旦離れると、心を休めることができます。優さんの場合は、その方法がうさぎとの触れ合いだと気づくことができました。
 コロナ禍だからこそ、学生たちには自分に合ったリラックス方法を見つけてほしいと願うキムラさんでした。