2021年09月の健康便り —メンタル—

将来に不安を感じるとき

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 「うちの学科はつぶしがきかないから、お前も就職活動では苦労するぞ」同じ学科の先輩からそう言われて、2年生の嶋田夏樹さんは急に不安になりました。自分よりもはるかに人当たりの良い先輩でさえ苦労したというのに、自分は果たして就職ができるのだろうか? そんなことを考えているうちに、不安で何も手につかなくなってしまった、と嶋田さんはため息交じりに訴えました。目の下のクマからは、眠れていない様子が伺えます。
 毎年この時期になると、健康管理センターの相談室には、メンタルの不調を起こした就活生だけでなく、そんな先輩たちの様子に、将来に不安を覚えた1、2年生も訪れます。

 嶋田さんの不安にひとしきり耳を傾けた相談室のキムラさんは、彼の悩みを整理してみました。「嶋田さんは、自分のコミュニケーション力に自信がないこと、アルバイトやサークル活動でのリーダー経験などアピールできる経歴がないことが不安で、このままだと就活で内定が取れないのではないか、と考えているのですね。では、どんな経歴があれば、就活で有利だと思いますか?」嶋田さんはしばらく考え、ポツリポツリと話し始めました。「そもそも僕は経験の幅が狭いように思います。やりたいことも、得意なこともよくわかりません。ボランティアやインターンをしてみたら、アピールできそうだし、やりたいことも見つかるかもしれない。でも、僕なんかに務まるだろうか…」

 「そう思ったら一度チャレンジしてみたらどうですか?」キムラさんは、背中を押すようにいいました。「実際にやるかどうかはともかく、まずは大学のボランティアセンターに行ってみませんか? 将来に向けて、小さなステップからトライしてみてはどうでしょう」嶋田さんは少しためらっていましたが、「帰りにボランティアセンターに寄ってみます」とうなずきました。

 そもそも「不安」は、危機を回避して将来をよくしていくための心の働きでもあります。とらわれすぎてはよくありませんが、不安と向き合うことは大切です。不安の要因について調べたり、だれかに相談したり、小さな目標をたてて実践したりなど、不安解消のために行動に移してみましょう。
 不安感が強すぎて心の負担になるようなときは、運動や趣味でストレスを発散したり、半身浴などでセルフケアをしてみたりするのも有効です。もちろん、だれかに相談することも心を軽くできる方法でしょう。

 2カ月後、キムラさんは地元紙の紙面に、寺子屋ボランティアの活動について取材を受けた嶋田さんの姿を見つけました。これからも学生さんの小さくて大きな、最初の一歩を応援していきたい、と思うのでした。