2021年11月の健康便り —メンタル—

あなたもゲーム依存予備軍?

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 数日前メールのやりとりで面談時間を決めていた2年生の金子隆司さんが、約束の午後3時に面談室に訪れました。健康管理センター相談室のキムラさんは「時間通りに来てくれた」と、ほっとしながら笑顔で迎え入れました。金子さんは、硬い表情のまま小さく会釈して着席しました。

 金子さんのメール送信時間は午前3時過ぎでした。メールには、コロナ禍で家に閉じこもっている間にゲームにのめり込んでしまったこと、昼夜逆転の生活になり対面授業が始まったのに休んでいること、日中いくら電話しても出ない金子さんを心配した地方に住む母親に言われて同じ沿線に住む兄が様子を見に来てくれたことが書かれていました。「兄に、毎日ゲームを10時間近くしていることを打ち明けたら、ゲーム依存になっているのではないかと言われ、相談するように促されてメールしたんです」と話してくれました。

 「僕は人前で積極的に話すのが苦手なんです。入学したらオンライン授業が始まって、画面越しに教授に質問したり、グループトークで意見を言ったりすることができず、ずっと受け身で授業を受けていました。結局1年のときは友達もできず、2年になってもコロナ禍で家にいなくちゃいけなくて、暇つぶしにネットゲームをやってみたんです。ゲームはレベルが上がると強くなれるし、オンラインで仲間と協力して危機から脱出できたりすると気分が高揚して夢中になってしまって。僕は、もうゲームに依存していますよね」と不安そうに話しました。

 キムラさんは「でも、金子さんはゲームが終わった後、お兄さんに言われたことを思い出して自分からメールをくれたよね。今日も約束通り来てくれた。確かに予備軍になっているかもしれないけど依存症にはなっていないと思いますよ」と話し、ゲーム依存症について説明しました。
 WHO(世界保健機関)は「ゲーム障害」という疾患名で、その定義を①ゲームをする時間をコントロールできない、②他の生活上の関心事や日常の活動よりゲームを優先する、③ゲームによって問題が起きているにもかかわらずゲームを続ける、④学業や仕事、家事などの日常生活に著しい支障がある、としました。これら4つが全て当てはまり、この状況が12カ月以上続く場合、「ゲーム障害」と診断されます。
 金子さんはゲームにのめりこんで半年程ですが、このままゲームの世界に居続けると依存が強くなる可能性もあります。キムラさんは、彼が抱いている現実世界の生きづらさを理解し、ゲーム以外で安心していられる場が見つかるようにサポートしていくことが必要だと思いました。
 「じゃあ、僕はまだゲームから脱出できるんですね」と安心したように答える金子さん。「そうね。ここから、脱出法を一緒に考えていきましょう」とキムラさんが返すと、「こっちの脱出の方が、やりがいがありそうですね」と、嬉しそうに微笑みました。