2021年12月の健康便り —メンタル—

多様な性について考える

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 髪は短くボーイッシュ。人懐っこそうな感じの3年生、森本真紀さんが「失礼します。こんにちは」と元気よく健康管理センターの相談室にやって来ました。真紀さんは、笑いながら「たいしたことではないのですが…」と話し始めました。でも、そのあとは言葉に詰まって話せません。キムラさんが真紀さんの顔を見ると、目には涙が溜まっています。キムラさんは「今までたいしたことではないと思って1人で我慢していたのね。辛かったね」と声をかけると真紀さんは小さく頷きました。

 「女子トイレに入ることや女子更衣室で着替えることが辛いです。物心ついた頃から自分が女性だと意識したことは1度もないんです。体は女、心は男って感じです。周囲の子達は、自分を男の子っぽい女の子として受け入れてくれている…。だから一緒にトイレに行かないとか、着替えをトイレでしてくるとか言いにくいです。でも、トランスジェンダーだとカミングアウトしたら、周囲の子達は自分にどう接したらいいのか、わからなくなってしまうと思います。みんなが離れていってしまうのではないか、と怖い気持ちになります」
 「怖い気持ちになるよね。カミングアウトした後の周囲の反応を考えたら…」とキムラさんは言いました。
「怖いです。それならば、このまま我慢していた方がいいのかなって。考えていたら、どうしたらいいのかわからなくなってしまって…」
 「そうだよね。みんながトランスジェンダーについてどこまで知っているかもわからないしね。よかったら、真紀さんの大学生活を過ごしやすくするにはどうしたらいいか、これから一緒に考えていかない?」
 「はい。そうしたいです」と真紀さんは少し明るい声になりその日の相談は終了しました。

 真紀さんはLGBT(性的マイノリティ)のT=トランスジェンダー(身体的性と自認する性が一致しないセクシュアリティ)」の状態にある方です。Lはレズビアン(女性の同性愛)、Gはゲイ(男性の同性愛)、Bはバイセクシャル(両性愛)を指します。性的マイノリティであることを思春期である学生時代に気付くことは多く、学生生活に支障をきたすことも少なくありません。
 当事者である学生の支援や理解はもちろんのことですが、支援していく教員の知識や理解を深めるとともに、学生全体への教育と理解を広げていくことが重要となってくるのではないかしら、とキムラさんは思いました。