2022年1月の健康便り —メンタル—

気付いていますか? 恋人からのDV

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 大学3年生の川端大介さんは初めて大学の健康管理センターの相談室を訪れました。心理カウンセラーのキムラさんが出迎えると一瞬ホッとした表情を浮かべましたが、すぐ真顔になり、こう切り出しました。
 「付き合って1年になる彼女がいます。とてもかわいい子で、こんな自分と付き合ってくれるからと大事にしてきました。ところが彼女、とてもわがままで…。最近付き合いを続けるのに疲れてしまって…」

 彼女はクリスマスや誕生日になると、川端さんのアルバイト収入に見合わないような高額なアクセサリーをねだったり、セックスがよくないと「元カレはよかった」などと比べるような発言をしたり、自分が送ったLINEにすぐ返信がこないと怒りだすなど、自己中心的なふるまいをするようでした。そんな彼女の言動に違和感を覚えた川端さんが別れを切り出すと「別れるなら死んでやる!」と言い出し、まるで脅しを受けているようだとのこと。

 キムラさんは川端さんに問いかけます。「好きな人を大事にしていることはわかるわ。でも、おかしいと思うことを我慢して彼女の気持ちを優先させることと、彼女を大事にすることは違うんじゃないかしら?」
 「叩くなど体への暴力だけでなく、自分の思いどおりに動いてほしいと相手をコントロールすること、思い通りにならないと不機嫌になること、『LINEの返信が遅い』『電話に出ない』と一方的に怒ることも、交際相手への暴力…、つまりデートDVになる可能性があるの。『別れるなら死んでやる』も精神的な暴力のひとつなんです」そうキムラさんが説明すると、川端さんは目を丸くしました。

 「もしもあなたが嫌だと思うことを彼女に話してもわかってもらえず、あなたが彼女と別れたいと思うのなら、結婚しているわけではないので、こういう理由で別れます、と宣言して離れればいいの。連絡を絶つ、無視する、それでいいんです。もしも、付きまとい行為などをされたら『ストーカーです』と警察に相談する方法もあるけれど…。あなたはどうしたい?」とキムラさんが尋ねると、川端さんは、考えながら言いました。
 「今まで、相手の気持ちを考えたほうがいいと思って我慢していました。でも違うんですね。改めて彼女に話してみます。僕が嫌なことはわかってもらいたいし、彼女だけでなく僕自身の気持ちも大事で、お互いが相手の気持ちを尊重して、対等に意見を言い合える関係になりたいです」
 「彼女と話し合ってもわかってもらえない場合は、2人で相談室にきてもいいですよ」とのキムラさんの言葉に、我慢して抱えこまなくてよいと安心した川端さん。穏やかな表情で相談室を後にしました。