2022年3月の健康便り —メンタル—

マインドフルネスでストレスに対処する

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 大学1年生の吉村由衣さんは、体調が優れないとのことで健康管理センターの相談室にやってきました。吉村さんは淡々と「最近お腹が痛くなることが多くて、それが気になると授業に集中できないんです。病院には行ったけど『身体の病気ではないだろう。よく休んでリフレッシュするように』と言われました。でも、リフレッシュってよく分からなくて」と話しました。

 相談室のキムラさんが、最近の生活について尋ねてみると、「とにかく忙しいけど、忙しくないと逆に不安になる。大学、バイト、サークルで家には寝に帰るだけ」と答えました。キムラさんは、活発な吉村さんのあり方を認めつつも「頭ではいろいろと活動したいのかもしれないけれど、身体は別のことを感じているのかもしれないね」と指摘しました。吉村さんは驚いたような表情を浮かべ、「そういえば、最近身体がすごく重くなることがあって…」とつぶやきました。

 その後しばらく、キムラさんは吉村さんの様子を見ていました。数分間の沈黙のあいだに何か考えていた吉村さんはこう続けました。「そういえば、大学受験最後の数か月は疲れていても、多少調子が悪くても、追い込みで身体に鞭打って勉強しました。試験に落ちることの恐怖心に負けないようにしていました」キムラさんはそれを聞いて「追い込みの時期に身体の疲れを麻痺させて、頑張っていたのかもしれないね」と返すと、吉村さんは「そうかもしれないです」と答えました。

 そこでキムラさんは、麻痺した感覚を取り戻すために、身体に注意を向けるマインドフルネスの説明をしました。マインドフルネスとは、身体感覚に気づきを向けていくことで、自分で封じ込めてしまった感覚を取り戻す手助けとなる方法です。ピンと来ていない様子の吉村さんでしたが、とりあえずやってみることになりました。相談室の椅子に座った状態で、注意を向けやすい身体の部位はどこかと尋ねると、吉村さんは足の裏や背中と答えました。しばらく足の裏や背中の感覚に注意を向けるように、キムラさんは促しました。今度は、先ほど言っていた重たい感覚がどこにあるか尋ねました。すると、肩に感じる、とのことだったので、しばらく注意を様々な身体の部位に向けて、肩の重さにはとらわれないようにガイドしました。

 10分くらい実践した後で振り返りをすると、「肩の重さに気づいたことで自分は疲れていたんだ、と感じることができました。背中で寄りかかっているのを感じたら、お腹の嫌な感じが少し和らぐように変化していきました」と答えました。
 キムラさんは「しばらく練習を続ければ、麻痺した感覚を取り戻して、自分ともう少しうまくつきあえるようになるかもしれないですよ」と提案しました。吉村さんは納得したように「しばらく試してみます」と言って、来週も相談室に来る約束をして帰りました。