2022年4月の健康便り —健康—
大野慎太郎さんは、4月から一人暮らしを始めた大学1年生。授業中に腹痛と吐き気を感じ、健康管理センターへ駆け込みました。発熱や嘔吐もあり、動けない様子を見て、看護師のモモセさんはすぐに救急車を呼びました。大野さんは病院で虫垂炎と診断され、緊急手術を受けることになりました。遠方に住むお母さんは、大慌てで大野さんの入院した病院へ向かいました。
虫垂炎とは、虫垂に起こる炎症です。どの年齢でも起こりますが、特に青年期、20歳代で多いです。虫垂炎の原因は解明されているわけではありませんが、ほとんどの場合、虫垂内部が閉塞することから始まると考えられています。
従来から虫垂炎は、上腹部やおへその周辺から痛み出し、吐き気や嘔吐があり、その後吐き気が消えると痛みが右下腹部に移動すると言われています。しかし、そのような症状が出るのは患者の50%未満です。多くの患者は、痛みが腹部全体に広がります。虫垂が破裂すると、痛みは一時的に軽減しますが、その後腹膜炎が起こり、痛みと発熱がひどくなることもあります。激しい腹痛が数時間続いている時、腹痛に加えて吐き気や嘔吐、発熱がある時は、一時的に痛みが軽減したとしても早めに内科を受診しましょう。
虫垂炎は、医師の触診、血液検査、腹部CT検査、超音波検査などで診断を行います。軽い場合は抗菌薬で炎症を抑える薬物療法による治療、炎症が強い場合は手術をします。抗菌薬による治療は身体への負担が少ないので希望する方が多いですが、再発も多いため、手術による虫垂の切除が推奨されています。治療法について疑問点があれば医師とよく相談するとよいでしょう。
虫垂炎を治療しないままでいると虫垂が破れて腹腔内に感染が広がり、腹膜炎を起こす恐れもあります。腹膜炎を併発すると激しい痛みが生じ、大掛かりな手術が必要です。回復に時間もかかります。破裂前に手術をした場合には1~3日程度で退院でき、早く完治します。
救急車を呼んでくれたモモセさんに報告の電話をした大野さんのお母さんは「急に虫垂炎で手術だなんて驚きましたが、無事に済みました」とほっとした様子です。「大事に至らなくてよかったですね。これからも気軽に健康管理センターをご利用ください」と明るい声で言いました。モモセさんの言葉を聞いて、息子の一人暮らしを心配するお母さんは安心し、やっと笑顔になりました。