2022年4月の健康便り —メンタル—
大学の健康管理センターの相談室を訪れた森田理恵さん。今年度の新入生です。森田さんはオンライン授業と並行し、週3回ほど通学していますが、まだ緊張が解けず、誰とも話ができないでいます。憂うつな気持ちを抱えたまま授業への出席は続けていますが、早くも孤立してしまったのではないかと肩を落としていました。「どうやったら友達が作れるのでしょうか…」心理カウンセラーのキムラさんに尋ねます。
キムラさんは「中学高校ではどうしてきたのかしら」と質問しました。
森田さんはもともと引っ込み思案な性格のようです。高校入学時は同じ中学出身の友人がクラスにいたため、友人を介して少しずつ馴染むことができました。ところが大学に知り合いは1人もいません。「頑張って友達を作ろう!」と意気込んでいたのですが、人見知りしてしまい、自分から声をかけられずにいました。
「勇気を出して自分から話しかけてみるのはどうかしら」「どんな人だったら話しかけやすいと思いますか」とキムラさん。「そうですね…誰にでも優しく接してくれる雰囲気がある人でしょうか。でも自分から話しかけるきっかけが見つからなくて…」と森田さんは自信なさげです。
そこでキムラさんは、目標を立てようと提案してみました。「小さい目標を立ててやってみるのはどうでしょう。例えば次の授業に出たときに、1人にだけ話しかけてみる。挨拶でもいいし、近くに座った子にボールペンを貸してもらうとか、ペンについたマスコットがかわいいとか、そんなふうに話しかけてみるのはどうかしら」森田さんは少しの間考えていました。「そういえば、テーマパークのキャラクターのキーホルダーをつけている女の子がいるんです。私も春休みにそのテーマパークに行ったから、その子になら話しかけやすいかも」とイメージが沸いた様子です。
「いい案ですね! 持ち物をほめられたら嬉しいし、共通の話題から話が広がることもあるものね」とキムラさんは具体的に思い描けるよう森田さんに伝えました。
「それとね、1人でいるのは悪いことではないですよ。友達を作らなければ、と思いこまなくても大丈夫。大学生活は長いから、好きなものや森田さんに興味を示してくれる人が別のタイミングで現れるかもしれません。焦る必要はないわ」
「森田さんの大学生活が充実したものになりますように…」キムラさんはそう願いながら森田さんを相談室から送り出しました。
「そういえば彼女はどうしているかしら」と数日後、森田さんのことを思い出したキムラさん。ほどなくしてキャンパス内で友人数人と笑いながら歩いている森田さんの姿を見かけ、思わず笑みがこぼれます。「一歩踏み出したのかしら…。よかった」
今年度も学生とともに少しずつ成長していきたい、キムラさんはそう気持ちを新たにするのでした。