2022年5月の健康便り —健康—

子宮頸がんとHPVワクチンについて

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 大学4年生の加藤春菜さんは、子宮頸がんを予防するワクチン(HPVワクチン)が無料で接種できる機会があるとネットのニュースで目にしました。お母さんに確認すると、母子手帳にはHPVワクチンを接種した記録はなく、「副反応が心配で受たせなかったのよ」とのこと。接種したほうがよいのかどうか不安になり、健康管理センターの看護師モモセさんに相談することにしました。

 子宮頚がんはHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が原因と言われています。性行為により子宮頸部の粘膜に細かい傷ができ、そこからウイルスが侵入して感染します。性行為の経験がある女性の50~80%が生涯で一度は感染を経験すると報告されています。HPVに感染してもほとんどの場合、ウイルスは自然と排除されます。しかし、ウイルスが排除されず数年から数十年にわたり持続的に感染した場合に子宮頸がんになることがあります。
 子宮頸がんを予防する方法として、HPVワクチンの接種があります。また、子宮頸がん検診を定期的に受けることでがんになる過程の異常(異形成)や早期のがんを発見することができます。
 HPVワクチンは、子宮頸がんをおこしやすい2種類(16型と18型)のHPV感染を予防します。子宮頸がんそのものを予防する効果があることもわかっています。ワクチンを打った後、接種部分の腫れや痛みなどの副反応が起こることがあります。筋肉注射なのでインフルエンザワクチンの接種に比べて痛みが強いと感じる場合もあります。まれに重い症状(重いアレルギー症状や神経系の症状、広い範囲の痛み、手足の動かしにくさといった多様な症状)が報告されています。ワクチン接種後に体調不良が生じた場合は早めに接種医へ相談しましょう。医療機関に迷うことがあれば保健所へ相談してみましょう。
 厚生労働省はHPVワクチンの積極的接種の勧奨を控えていた時期がありました。その時に定期接種する機会を逃した方(平成9年度~17年度生まれの女性で過去に3回接種を受けていない)を対象に、公平な接種機会を確保するため、2022年の4月からキャッチアップ接種が始まります。詳しくはお住いの自治体に問い合わせてみてください。

 「HPVに感染する前にHPVワクチン接種することが大切なんですね。これから接種できるなら検討してみようかな」と加藤さん。「居住地の保健所へ問い合わせてみるといいわよ」とモモセさんが伝えると、さっそくスマートフォンで自治体のホームページを調べだしました。